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松井裕樹がいま明かす“WBC中の苦悩”とは? 大谷翔平の“ある助言”に救われた話…「こういう気持ちは経験できない」「苦しいながらも前に」
text by
田口元義Genki Taguchi
photograph byKYODO
posted2023/05/15 11:03
登板1試合に終わったWBC。松井裕樹が大会中の苦悩と、救われた大谷翔平の言葉を明かした
「苦しいながらも前には進んでいましたけど、まだまだでしたよ。自分で自信をもって投げるところまでって感じではなかったです」
言葉で表現するのは難しい
韓国戦以降もピッチングのアジャストに努めてきたわけで、最後までトップフォームには戻らなかったということか?
そう向けると、松井の言葉が少し濁った。
「う~ん……準備はしてきたんですけど、そうっすねぇ……具体的にどうだったかって言葉で表現するのは難しいですね」
ありていに総括し、こちらの質問をかわすことはできたはずだ。しかし松井は、なんとか真摯に答えようとしてくれていた。
だから、伝えたいことを伝えた。
ボールへの不安。結果を出せないことで湧き出る周囲の雑音。デコボコ道を進んだWBCで投げた1試合で、その時点でのベストを見せてくれたのではないか――。
松井が恐縮しながら軽く頷く。そして、真っ直ぐに言葉を投げ返してくれた。
「こういう気持ちっていうのは、普段はなかなか経験できないですからね。登板がもらえない悔しさだったりとか、思うようにいかないこともあるんだってことを知った上でシーズンに臨めているんで。そういった意味では、いい期間だったのかもしれませんね」
今も眩い光を維持するWBC日本代表。
松井はそこから抜け出し、楽天の絶対守護神としてグラウンドの中心に君臨する。
11試合に投げ5セーブ、防御率0.00(5月14日終了時点)。変わらず「らしさ」を堅持する松井が、ゲームを締め、マウンドで吼える。
生み出す新たな光は、力強い。
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