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松井裕樹がいま明かす“WBC中の苦悩”とは? 大谷翔平の“ある助言”に救われた話…「こういう気持ちは経験できない」「苦しいながらも前に」
text by
田口元義Genki Taguchi
photograph byKYODO
posted2023/05/15 11:03
登板1試合に終わったWBC。松井裕樹が大会中の苦悩と、救われた大谷翔平の言葉を明かした
それだけに、早い段階から不安材料に気付けたのは不幸中の幸いだったのかもしれない。
WBC公式球に馴染めなかったのか
代表合宿前の日本ハムとの練習試合で6失点。ジャパンのユニフォームを着て初めてマウンドに上がった、2月26日のソフトバンクとの壮行試合でも、1回を無失点で切り抜けながらも2個のフォアボールを許した。
原因はわかっていた。WBCの公式球の扱いに習熟しきれていなかったことだ。
重量5~5.25オンス(141.7~148.8グラム)、周囲9~9.25インチ(22.9~23.5センチ)に定められた世界規格のなかで、NPBで使用されているボールはサイズが比較的、均一とされるなか、メジャーリーグでも使われるWBCのボールは均等ではなく、「滑りやすい」とも言われている。過去4回も大会前には必ず懸案事項として挙げられ苦心する選手がいたなか、2017年の第4回から2大会連続で出場する松井も例外ではなかった。
WBCのボールが馴染んでいないのでは?
このような周囲の声だけが独り歩きしてしまう現実を、松井は受け止めていた。
「最初は結果を出せていませんでしたし気にしたこともありましたけど、でも、そこを言い訳にするつもりはなかったですよ」
ボールという難題に懊悩する。そこにフォーカスするあまり視野が狭くなりそうな状況下であっても、松井はそうならなかった。
降板後、大谷翔平がかけた言葉
現状打破の兆しが見え始めたのは、3月3日の中日との壮行試合。2安打3四球、4失点と崩れ、降板したあとのことだった。
「前傾を意識したほうがいいんじゃない?」
肩を落とす松井に寄り添い助言を施したのは、大谷翔平だった。