野球クロスロードBACK NUMBER
松井裕樹がいま明かす“WBC中の苦悩”とは? 大谷翔平の“ある助言”に救われた話…「こういう気持ちは経験できない」「苦しいながらも前に」
text by
田口元義Genki Taguchi
photograph byKYODO
posted2023/05/15 11:03
登板1試合に終わったWBC。松井裕樹が大会中の苦悩と、救われた大谷翔平の言葉を明かした
左ピッチャーの松井が右足を上げ、腕を振るまでの動作の際に、股関節の角度を少し前気味にしたほうがボールも扱いやすくなるのでは――。そんな趣旨の会話だった。昨シーズンにエンゼルスで34ホームラン、15勝。「野球の神様」ベーブ・ルース以来、104年ぶりにダブル2桁を成し遂げた世界のトッププレーヤーの言葉に、松井は頭を下げる。
「野球にかける情熱と時間は群を抜いていますよね。トレーニングはもちろんですけど、食事にも気を遣われているし、全て野球のために時間を使っているので。僕もそうやって過ごしているつもりではありますけど、もっと意識を向けてやっていかないといけないなって思わせてもらえました」
少しずつ、松井らしさを取り戻していく。
韓国戦で三者凡退に抑えるも…
WBC直前の阪神との強化試合で1回をパーフェクトに抑え、迎えた本戦1次ラウンド2戦目の韓国との試合でも馬力を見せた。
8回にマウンドに上がった松井が、大きく息を吸い、吐く。13-4。試合の大勢が決したかに思える展開でも、緊張感を自覚する。
「もう、いっぱい、いっぱいだったんで(笑)。ゼロに抑えてベンチに帰ってこようって気持ちでだけで精一杯でした」
3番のイ・ジョンフを149キロの内角ストレートで差し込みセンターライナーに打ち取ると、4番のパク・ビョンホにはスライダーで体勢を泳がせライトフライに仕留めた。そして、5番のキム・ヒョンスをフォークボールで空振り三振と、韓国のクリーンアップを3者凡退に封じ込めて役目を果たした。
全23球のうち、ストレートは15球。試合後も今も「浮くボールはあった」と反省点は変わらないが、少なくともWBC公式球への不安要素を払拭しつつあったことは、結果が物語っていたはずだった。
しかし本人から言わせれば、WBC期間中は安定とは程遠かったのだという。