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「頼む、行ってくれ」8年前のドラ1・ロッテ平沢大河(25歳)“4年ぶりの一発”を打てた理由とは? レジェンドに学んだ“準備の大切さ”
text by
梶原紀章(千葉ロッテ広報)Noriaki Kajiwara
photograph byChiba Lotte Marines
posted2023/05/02 11:03
粘り強い打撃でチームに貢献するロッテ平沢大河(25歳)。本職ではない外野の守備でも球際の強さが光る
キャンプ、オープン戦とアピールは続いたが、野手の編成上、最後の最後で開幕一軍から漏れた。3月26日のオープン戦後には監督室に呼ばれ、吉井監督から「絶対に出番が来る。だから下でしっかりと準備をしていて欲しい」と伝えられた。いつ呼ばれてもいいように気持ちを切らさず、集中力を保ち、準備を重ねてきたからこそ、平沢は慌てることなく出番に備え、前述の通り、ホームランという結果を残せたのだろう。
その心構えと準備の大切さは、2021年限りで現役を引退した鳥谷敬内野手の背中を見て感じたものだった。
「いつもボクが球場入りをしたら、鳥谷さんはもうウェートをしていた。どんなに朝早く来ても(鳥谷は)いつも身体を動かしていた。いつから球場にいるのだろうと思った。準備を凄くする人というイメージ」
プロ通算2000安打を放っているレジェンドとは、同じ内野手ということもあり一緒にノックを受ける機会が多かった。40歳を過ぎても華麗な守備は健在。「ボクはゼエゼエいいながらやっていることでも(鳥谷は)ケロッとしていた。体力が凄い。でもその体力はそういう準備から生まれていると思った」と平沢。伝説のプレーヤーの姿を目に焼き付け、準備を大切に、日々を過ごすように心がけるようになった。それが今、このチャンス到来で大いに生かされている。
「8年はあっという間です」
月日というのはあっという間だ。マリーンズに2015年秋のドラフトで高卒新人で指名された選手は平沢を含めて3人。成田翔投手は昨オフの現役ドラフトでヤクルトに移籍した。原嵩投手は21年限りでユニホームを脱いだ。他球団を見ても、同じく鳴り物入りで楽天に入団したオコエ瑠偉外野手も現役ドラフトで巨人に活躍の場を移した。
環境だけでなく、立場も大きく変化している。
「8年はあっという間です。後輩もたくさん、入団してきた。ルーキーはみんな年下。つい最近までボクも高校を出ばかりの新人だったのに、早いなあと思いますよ。当時はその時なりに考えて必死にやっていたつもりだけど、今のボクからすると、なにも考えていなかったなあと思う。もっと、こうしたらよかったのにとか、思うことがある」
そんな悔いを漏らした平沢だが、今は前だけを見つめている。その目に迷いはない。
「ボク自身は優勝争いを経験したことがない。シーズン最後、しびれる場面でプレーをしたい。そしてチームに貢献するプレーがしたい。そのためにも今を必死に過ごしています」