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「今だから言えます」井口資仁が語る佐々木朗希“あの完全試合目前の降板”はなぜ?「交代の一番の理由は…」「朗希が叩かれちゃいけない」
text by
岡野誠Makoto Okano
photograph byTatsuo Harada
posted2023/04/29 11:01
昨季まで千葉ロッテマリーンズを率いた井口資仁がNumber Webのインタビューに応じた。佐々木朗希の2試合連続パーフェクト達成「未遂」の裏側とは
松川虎生“抜てき”のワケ
朗希は2年目の2021年、5月16日の西武戦でデビューし、27日の阪神戦でプロ初勝利を挙げる。9月10日の楽天戦では田中将大と投げ合い、8回2失点。白星は付かなかったが、井口は一つひとつ階段を登らせて行った。そして3年目の昨年、朗希は急成長を遂げる。春季キャンプのブルペンで、井口はその投球に惚れ惚れとしたが、新たな悩みも抱えた。どの捕手も、140キロ台後半で鋭く落ちるフォークボールを抑えられなかったのだ。
「シート打撃の時、たまたま松川(虎生)と組ませたら、ちゃんと止めた。朗希が投げる時は松川にしようと。朗希にとって年下なので、首を振ったり、自分の投げたい球を放ったりできる。パスボールしたら、『ちゃんとやれよ』と注意もしやすいですからね。松川は石川(歩)や美馬(学)と組ませても上手く行った。2人とも松川がサインを出すと首を振らず、無茶苦茶テンポが良くなる。彼らに聞くと、『松川は余計な球種を出さないから、考えずにどんどん投げられる』と言うんですよ」
井口は、松川を高卒新人捕手としては1955年の谷本稔(大映)、2006年の炭谷銀仁朗(西武)に次いで史上3人目の開幕スタメンに抜擢した。恐れを知らない18歳は開幕戦で石川−ゲレーロ−益田直也の完封リレーをアシストした。
“八回完全”で交代…本当の理由「今だから言えますけど」
朗希と松川は、バッテリー2試合目の4月3日の西武戦で初勝利を挙げる。そして、3試合目となる10日のオリックス戦で完全試合を達成。17日の日本ハム戦でも8回までパーフェクトに抑えた。しかし、史上初の2試合連続完全試合達成の目前で、井口は朗希の交代を告げた。肩やヒジへの負担など将来を考えた決断に賛同の声もあれば、前代未聞の快挙を断つ采配に否定的な意見も上がった。
「今だから言えますけど、交代の一番の理由は朗希が自分から申し出たからです。7回の時点でちょっとヒジに張りが出てきて『8回は行けるけど、9回は無理です。8回にランナーが出たり、何かあったりしたら代えてください』という話でした。普通のピッチャーなら偉業を前にして続投を志願するでしょう。朗希の自己管理能力はやっぱり凄いと思いますね」
試合後、井口は「いろんなことを加味しながら今日は100球弱かなと。いろいろ先々考えるとあそこが今日は限界だったと思う」(2022年4月18日配信・スポーツ報知)と自らの意思で交代したと明かしていた。なぜ、当時と今でコメントが異なるのか。