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突然の辞任にロッテ選手たち号泣…前監督・井口資仁の“兄貴分だけどラインは引く”リーダー像「怒ったことない」「一緒に食事は行かない」
posted2023/04/29 11:02
text by
岡野誠Makoto Okano
photograph by
Tatsuo Harada
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「甲子園で活躍した選手」の葛藤
井口資仁・前監督の我慢がいま実を結び始めている。今季5年目の藤原は開幕から先発メンバーに名を連ね、好調を維持している。井口は2月下旬の時点でこう話していた。
「去年まで長打を打ちたい気持ちがなかなか抜けなくて、引っ張るところがあった。でも、春のキャンプで見たら、かなり自然体で構えるようになっていた。今年は良くなるんじゃないかと。ホームランをガンガン打つよりも、塁に出て掻き回すタイプだと思います」
藤原は2018年、大阪桐蔭高の4番として甲子園春夏連覇に貢献。聖地での通算5発は、先輩の森友哉に並ぶ左打者最多だった。しかし、期待された結果を残せないまま、4年が過ぎた。井口は昨年まで間近で接する中で、こう感じていた。
「高校時代のイメージが抜けていないんじゃないですか。平沢大河にしても、甲子園で活躍した頃の自分を追いかけてしまう。高校から入ってきた選手は客観的に自己分析をしづらい面がある。でも、平沢は去年から広角にしっかり打つようになったし、藤原も4年経って今までのやり方ではプロで通用しないと気付いたと思います」
強制的に「おまえ違うだろ」とは言いません
井口は青山学院大学で24本塁打を放ち、東都リーグの通算本塁打記録を樹立。1997年、王貞治監督率いるダイエーに入団し、デビュー戦で満塁ホームランを放った。しかし、長距離砲への欲を捨て、中距離打者に転身して成功を収めた。監督として、藤原に諭すことはなかったのか。
「やんわりとコーチと一緒に話したこともありますけど、強制的に『おまえ違うだろ』とは言いません。仮に、周りが三遊間に転がしてヒットを狙いなさいと命じても、選手には思い描く理想像がある。プロ野球選手は自己責任ですし、やっぱり自分で気付かないと身にならないので」
安田尚憲の起用に関しても、批判されながら貫いた。コロナ禍の2020年、120試合中87試合で4番を打たせた。その間、打率2割3分3厘、4本塁打、44打点と結果を残したとは言い難かった。