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「ちょっと病みつきになる」福田正博が惚れた最高のパサーはラモスでも小野でもなく…森保に慰められたJ2降格、引退を決めたオフトの言葉 

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飯尾篤史

飯尾篤史Atsushi Iio

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photograph byJ.LEAGUE

posted2023/04/24 11:02

「ちょっと病みつきになる」福田正博が惚れた最高のパサーはラモスでも小野でもなく…森保に慰められたJ2降格、引退を決めたオフトの言葉<Number Web> photograph by J.LEAGUE

Jリーグ通算228ゴールを決めた福田正博が「病みつきになる」と評したパサーとは?

 一方、同じく稀代のパサーであり、98年から01年6月までともにプレーした小野は、どんな印象だったのか。

「高校を出て、いきなりあそこまでやれる選手ってなかなかいない。今でもいないよね。右足も左足も苦もなく、インサイドもアウトサイドも器用に使うから、これは凄いなあと思った。何よりサッカーを楽しんでいるのがいいよね。ストライカーとしてウーべ、伸二のふたりと一緒にやれたのは本当に幸せなこと。ただ、伸二はウーベとはちょっとタイプが違うんだよ」

 シンプルにインサイドキックを繰り出すバインと異なり、小野のプレーはノールックパスやアウトサイドキック、浮き球のパスなど多彩だった。

 だが、それがときにパスの受け手を悩ませたという。

「今だから言うけど、伸二の右足のパスはあまり好きではなかったな(笑)。伸二は右足だと、アウトサイドで出したり、浮き球で出したり、いろいろやるんだよ。見ている人たちは『おおっ』って思うけど、受け手としては、変な回転がかかっていたりして難しいんだな。逆に伸二の左足のインサイドキックは受けやすくて大好きだった。左足だとシンプルに蹴るから、綺麗な回転のボールがピタッと届くんだ。糸を引くような、というのはああいうことを言うんだろうね」

チキも驚いた福田のベンチスタート

 その小野がシドニー五輪予選で重傷を負ってしまった99年、レッズは残留争いに巻き込まれた。

 ファーストステージ終了後に原博実監督が解任され、オランダ人のア・デモス監督が就任したのが、その3週間後。成績は一向に上向かず、2度の4連敗を喫してしまう。

 J1残留が懸かったラスト4試合。ジェフユナイテッド市原戦、ベルマーレ平塚戦で福田は連続ゴールをあげ、チームに勝ち点3をもたらした。そして、最終節のサンフレッチェ広島戦を迎える。

 この時点で年間16位のベルマーレの降格は決まっており、15位がジェフ、14位がレッズ。レッズは90分のうちにサンフレッチェを下せば、自力で残留できるというシチュエーションだった。

 ところが、その運命の一戦のスタメンに、福田の名前がなかった。

「まさか、だよね。広島の守備陣はフィジカルが強いから、俺では難しいという判断だったのかもしれない。永井(雄一郎)とか、若い選手に賭けたわけだ。でも、大切なゲームで点を取ってきたのは俺なんだよ。メンバーが発表されたあと、チキ(ベギリスタイン)が『ケガでもしてるのか?』って。『おまえがいなくて、どうやって点を取るんだ? 点を取らないとJ1に残れないんだぞ』って。それくらいチキにとっては俺が外れたことが意外だった」

【次ページ】 世界で最も悲しいゴール「森保に慰められた」

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