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「ちょっと病みつきになる」福田正博が惚れた最高のパサーはラモスでも小野でもなく…森保に慰められたJ2降格、引退を決めたオフトの言葉
text by
飯尾篤史Atsushi Iio
photograph byJ.LEAGUE
posted2023/04/24 11:02
Jリーグ通算228ゴールを決めた福田正博が「病みつきになる」と評したパサーとは?
もっとも、福田が納得できないのは、スタメンから外されたこと以上に、途中出場の順番と与えられた時間だった。
0-0で迎えた54分に大柴健二が投入され、63分に盛田剛平が送り出された。別会場のジェフはリードしていたから、90分のうちに勝てなければ順位が入れ替わってしまう。
福田にようやく声がかかったのは、81分だった。
福田が期待に応えたのは、延長に入った106分――レッズの降格が決まったあと――のことだった。
世界で最も悲しいゴールは、こうして生まれたのである。
「(サンフレッチェの)森保(一)に『またJ1に戻って来ればいいじゃないですか』と慰められたのは覚えてるな。それにしても、もうちょっと時間をくれてもよかったんじゃない? 順番が違うんじゃない? っていう思いは今もあるよ。俺が入れば、スタジアムの雰囲気も変わったかもしれないよね。もう出番はないと思っていたから、入っていきなりチャンスが来たんだけど、準備不足でモノにできなかった。それは反省してる。でも、気持ちの整理がどうしてもつかなかった。『なんで?』『どうして?』って。呼ばれたときに何か指示されたけど、聞いてなかった。『早く出せよ』としか思っていなかったから」
それほど悔しい思いをさせられたにもかかわらず、福田は意外な言葉を口にする。
「彼がプロフェッショナルだったということも分かるんだ。勝てると思わせるようなミーティングをするし、トレーニングのメリハリも利いていたし、メディアをシャットアウトして集中できる環境を作っていたし。それに、俺を使わなかった理屈も、今はなんとなく理解できるんだ」
「今も納得がいかないままだな(苦笑)」
それは福田が現役を引退し、フォルカー・フィンケ監督のもとでコーチを務めたときのことだ。スタッフ会議においてフィンケが選手のどこに注目しているか、メンバー選考で何を重視しているのかを目の当たりにして、福田はドキッとさせられた。
「経験のある選手ってチームに与える影響力が大きいよね。それって、いい影響を及ぼすこともあれば、悪い影響を及ぼすこともある。俺も間違った行動をしたことはあったから、ア・デモスにはあまりいい影響を与えないと思われていたのかもしれないね。要は俺が信頼を得られなかったわけだ。そこで決断を下した彼はプロフェッショナルだと思うけど、俺としてはその決断に今も納得がいかないままだな(苦笑)」