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プレミア首位快走中! アーセナルを飛躍させた補強戦略…フロントのキーマンは誰?「(ジンチェンコ獲得は)半年前から計画していた」
text by
井川洋一Yoichi Igawa
photograph byGetty Images
posted2023/04/16 17:00
31節時点でプレミアリーグ首位を快走するアーセナルのアルテタ監督。ガナーズを19年ぶりの優勝に導けるか
「いや、私ではなく、アーセナルだったからだよ。私はただ、契約のプロセスを担っただけで、選手やその家族の前で、アーセナルについて説明しただけだ。(ジェズスの獲得のために)7カ月前くらいから話し合いの場を持ち、互いの理解を深めていった。彼には他にも新天地の候補がたくさんあったが、アーセナルのことを理解し、決断してくれた」
エンケティアは「アーセナルのハートを持っている」
前線の絶対軸のジェズスがカタールW杯のカメルーン戦でひざに重傷を負い、長期離脱を強いられることになった時は、先行きが不安視された――少なくとも外部からは。だがアルテタ監督とエドゥは、さほど心配していなかったのかもしれない。指揮官がユースチームを指導している頃から目をかけ、監督に就任するとすぐさまローン先から呼び戻したエディー・エンケティアがいたからだ。指揮官が「アーセナルのハートを持っている」と称える生え抜きのストライカーは、W杯後にリーグが再開してから2試合連続で得点したり、宿敵マンチェスター・ユナイテッド戦で決勝点を挙げたりするなど、期待に応えている。
この状況は、先を見据えた補強戦略が導いたものと言える。事実、アルテタ監督が初めて関わった'20年冬の移籍市場から、着実にチームの力になれる新戦力が増えている。それ以前は、失敗も少なくなかった。
象徴的なのは、その半年前に獲得したニコラス・ペペだ。クラブ史上最高額となる推定7200万ポンドを投じて呼び寄せたコートジボワール代表ウイングは、その超高額の移籍金に見合う活躍を見せられなかった。プレミアリーグのデビューシーズンは5ゴール、翌'20-'21シーズンは10ゴールとまずまずの数字を残したものの、昨季は1度しかネットを揺らすことができず、下部組織出身のブカヨ・サカにポジションを奪われ、今季はニースにローン。彼の帰還を待ち望んでいるファンは、おそらくひとりもいない。
ペペを迎えた'19年夏は、アーセナルの補強戦略にまだ計画性と一貫性がなかった頃だ。その1年前に、“プレミアリーグ最後の全権マネジャー”と呼ばれたアーセン・ベンゲル監督がクラブを離れると、少し前に加わったドイツ人のチーフスカウトとスペイン人のフットボール本部長が、それぞれのパイプを通じて新戦力を漁った。各々が懇意にするエージェントの勧めに盲目的に従い、現場の意見に耳を貸さないこともあったという。その後、内部の政治的な争いに敗れる形で、チーフスカウトは'19年2月に辞任し、その5カ月後にエドゥがテクニカル・ディレクターとして招かれた。
エドゥはその夏の市場ではペペで失敗したとも言えるが、ウィリアム・サリバやガブリエウ・マルチネッリら、現チームの主力に先行投資しているし、リース・ネルソンやサカらをアカデミーから引き上げてもいる。そして最大のヒットが、その半年後に指揮官に指名したアルテタだ。
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