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WBC世界一奪回のカギはダルビッシュの愛弟子2人が握る! 宇田川優希は「代表を辞退しろ」からダルの助言で…伊藤大海「夢をもらった人」
text by
鷲田康Yasushi Washida
photograph byHideki Sugiyama
posted2023/03/20 11:04
侍ジャパンの宮崎キャンプでダルビッシュ有の”教え”をうけた宇田川優希。最終決戦に向け侍ジャパンの”スクランブルエース”として期待される
野球界では無名の埼玉の公立校出身で甲子園出場経験はもちろんない。仙台大を経て育成枠でオリックスに入団してきた文字通りの“雑草”育ち。2年目の昨年夏に1軍登録されて、わずか半年余でジャパンのユニフォームを着たシンデレラボーイだが、直前のオリックスキャンプでは大会使用球にも馴染めずに調子が上がらず、太り過ぎを指摘されたりした。
自身のSNSには「代表を辞退しろ」というメッセージが届いた。スター揃いのチームにも馴染めず、ユニフォームの重さに押し潰されそうになっていた。そこに手を差し伸べてくれたのがダルビッシュだった。
「宇田川さんを囲む会に参加させていただきました」
2月20日の夜のダルビッシュのこの投稿、いわゆる「宇田川会」をきっかけに、ことあるごとに行動を共にするようになった。「買っちゃいました」と3月7日の京セラドームでのオリックスとの強化試合後にツイッターにあげたのは宇田川の96番のユニフォーム型キーホルダーの写真だった。
そんな2人の“師弟リレー”が実現したのが3月10日の韓国戦である。先発のダルビッシュから今永を挟んで3番手で宇田川がマウンドに。フォークで2つの三振を奪って打者3人を無安打の完璧投球で代表デビューを飾った。
「フォークも悪くなかったし、最後の三振もいいところに落ちて、そこは良かったと思う。やっぱりダルビッシュさんの先発の試合で投げられたのは、そこでWBCデビューは嬉しい」
ダルビッシュの助言で”スクランブルエース”へ
感慨深げだった宇田川は、翌日のチェコ戦では先発の佐々木朗希投手の後を受けて4回2死一塁で登板。打者1人を真っ直ぐ、フォーク、フォークの3球で空振り三振に仕留めて走者を置いた場面での連投テストも満点の結果でクリアしている。
「本当に凄い急展開。最初は気持ちもついていけなくて、野球以外でも大変だなという部分があったけど、チームに慣れてきて、自分のパフォーマンスも出せて成長しているなと思っています」
ダルビッシュの助言で日の丸の“スクランブルエース”へと成長した右腕の顔には、もうキャンプイン直後のどこか不安げなオドオドした様子はない。
おそらく準決勝のメキシコ戦でも、同じようにピンチの場面になれば、伊藤と宇田川の2人のどちらかがマウンドに上がることになるはずである。
そこでピンチを抑え切れるか。
派手さはないがこの2人が、侍ジャパンの世界一奪回へのキーマンとなりそうだ。
記事内で紹介できなかった写真が多数ございます。こちらよりぜひご覧ください。