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「じつはヌートバーは“全然打てないマイナーリーガー”だった」米国記者もビックリ“異例のスピード出世”…ヌートバー25歳はなぜ覚醒したのか?

posted2023/03/12 11:04

 
「じつはヌートバーは“全然打てないマイナーリーガー”だった」米国記者もビックリ“異例のスピード出世”…ヌートバー25歳はなぜ覚醒したのか?<Number Web> photograph by AFLO

WBC中国戦の3回、猛ダッシュからのスライディング。スーパーキャッチに東京ドームが沸いた

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生島淳

生島淳Jun Ikushima

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 ラーズ・ヌートバーは、「ホンモノ」だった。

 日本とのつながりが報道されることが多いヌートバーだが、それより私は、セントルイス・カージナルスという優良組織で異例の「スピード出世」を果たしたこの選手が、いったいどれほどの選手なのか、そちらに興味があった。

 本音をいえば、私は侍ジャパンのセンターには塩見泰隆か(彼はケガだから仕方がない)、近本光司がいいのではないか――と思っていたからだ。

 しかし、WBCが始まって中国戦、韓国戦でのヌートバーのプレーを現場で見て、「メジャーでsolid、手堅いキャリアを築くポテンシャル」を持っていると感じた。ダイナミックなプレーはファンのハートをわしづかみにしている。

341打席で7本塁打のマイナーリーガーだった

 ただ、2018年にカージナルスにドラフトされた時に、今の活躍を予想する人はほとんどいなかった。いや、マイナーリーグでプレーし始めてからも、それほど可能性を感じられる選手ではなかった。

 ヌートバーは、2019年にマイナーのシングルAとAAでプレーしたが、341打席で7本しか本塁打を打っていなかった。この成績のままでは、将来はない。

 ところがどうだ。2022年、メジャーリーグでは290打席で14本の本塁打を放っている。たった3年でヌートバーは変身した。

 その秘密は、コロナ禍にあった。

 2020年にコロナ禍が始まり、スポーツ界の先行きは不透明になった。その3月、ヌートバーは現代アメリカ野球の虎の穴ともいうべき、「ドライブライン」を訪れた。

【次ページ】 ヌートバーが“別人”になった練習方法

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栗山英樹
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