猛牛のささやきBACK NUMBER
大谷超え10打点&三振ゼロ「さすが吉田正尚」な成績に「ヒーローインタビューはまだ?」の声…ラスト2試合“熱い男”に期待すること
posted2023/03/20 11:02
text by
米虫紀子Noriko Yonemushi
photograph by
Naoya Sanuki
“See you again”
侍ジャパンが準決勝の地・マイアミへと旅立ったチャーター機の機内の写真に、吉田正尚(レッドソックス)はこの言葉を添えた。
インスタグラムのストーリーに投稿されたその言葉を見て、「ああ、本当に行ってしまうんだ」と寂しさを覚えたオリックスファンもいたことだろう。WBC準々決勝イタリア戦が、吉田にとって日本でのラストゲームになった。
日本での最後の打席をホームランで締めくくるところが吉田らしい。
今大会初めて4番を任されたイタリア戦の7回裏、ボール球を見極めながら、二度スイングしてイタリアの左腕ジョセフ・マルシアノの球にアジャストを図ると、6球目、135キロのスライダーを捉えた。ボールがバットに吸い付くような吉田らしいスイングで、東京ドームのライトスタンドへ。吉田のWBC第1号は、ダメ押しとなる大きな一発だった。
そういえば“京セラ”の最後も劇的サヨナラ弾
昨年まで所属したオリックスでの、本拠地・京セラドームの最終打席もホームランだった。1勝2敗で迎えた昨年の日本シリーズ第5戦。9回裏に4-4と追いつき、2死一塁の場面で打席に入った吉田は、ヤクルトの守護神、スコット・マクガフの2球目を豪快なスイングでライトスタンドへ運んだ。日本一への流れを作った劇的なサヨナラ弾は、打った瞬間にそれとわかる打球。ボールがスタンドに吸い込まれる前に、観客は総立ちとなった。
球場が“吉田正尚の時間”、“吉田正尚の空間”になった。
以前、「吉田選手にとってホームランとは?」と聞いたことがある。吉田は「うーん」と少し考えてから、こう答えた。
「“自分だけの空間”というか……。やっぱり1人で1点取れるし、球場全体の雰囲気も変わりますし。野球はどちらかというと間(ま)のスポーツなんですけど、そういう意味では、“自分の時間になる”みたいな感覚ですよね。相手チーム以外はみんな喜ぶことかなと思うし(笑)」
2019年からは、公式戦でのホームラン1本につき10万円を、認定NPO法人「国境なき子どもたち」を通じて、開発途上国で貧困に苦しむ子どもたちへ寄贈する活動も行ってきた。