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WBC世界一奪回のカギはダルビッシュの愛弟子2人が握る! 宇田川優希は「代表を辞退しろ」からダルの助言で…伊藤大海「夢をもらった人」
posted2023/03/20 11:04
text by
鷲田康Yasushi Washida
photograph by
Hideki Sugiyama
過去2大会で日本の大きな壁となったWBC準決勝の相手はメキシコに決まった。
この壁を乗り越えた先には、“不敗”の決勝戦が待っている。世界一に向けた最大の壁。そのマウンドを任されるのは、どうやら佐々木朗希投手と山本由伸投手の2人を軸にしたリレーになるようだ。そして、ここを勝ち上がると決勝戦はダルビッシュ有投手から今永昇太投手というリレーの可能性が高まっている。
最終決戦で必要な2人のリリーバー
もちろん栗山英樹監督の「総動員でいく」という言葉通り、野手陣も投手陣も全員がスタンバイして必勝態勢を組むことになる。中でもこの最終決戦を勝ち切るために、どうしても必要な2人のリリーバーがいる。
伊藤大海投手と宇田川優希投手である。
「ランナーを置いてファーストピッチからアジャストできる能力、スイッチの入れ方も上手いし、ブルペンで長いイニング待機してバックアップに回れる能力を持っている」
2人の特別な力を宮崎キャンプでこう評していたのは厚澤和幸ブルペン担当コーチだった。要は走者を置いたピンチの場面で、そこから脱出するための緊急登板ができる投手ということだ。
実際に一発勝負となったイタリアとの準々決勝突破のキーマンに、伊藤をあげる声は多い。
場面は5回だ。
快調に飛ばしてきた先発の大谷翔平投手に疲れが見え始め、2死球と安打で2死満塁のピンチを招いた。そして3番のDo.フレッチャー外野手にライト前にタイムリー安打を打たれて2点差とされてしまう。球数は71球。制限の80球まであと9球を残していたが、ボールも抜け出して明らかに限界は近づいていた。
あの場面で追加点を許していれば…
そこでベンチが救援指名したのが伊藤だった。
「ランナーを背負った場面での登板は緊張もしましたし、最初はふらついている感じもあった。真っ直ぐがいいなというのがあったので、変に変化球を打たれるよりは気持ちをぶつけていこうと思った」
こう語った伊藤は、バッターボックスの4番サリバン捕手を力で押し込み、最後はフルカウントから153㎞のストレートで遊飛に打ち取りピンチを脱出。直後の5回裏に打線が3点の追加点を奪って勝利の流れを作り出した。
もしあの場面で追加点を許せば、逆の流れに動き出す可能性があったはずだ。状況的には安打どころか四球も許されないという厳しい場面。だからこそ後続をピシャリと断った伊藤の働きが、イタリア戦の最大のポイントだったと言われる訳である。