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現地記者が震えた侍ジャパン“まるでマンガ”の発言録「時には弱さを見せながら」「自分を出していいんだ」…“史上最高チーム”になるまで
text by
佐藤春佳Haruka Sato
photograph byKYODO
posted2023/03/16 11:03
WBC現地記者が聞いた「忘れられない選手の言葉」とは。青春マンガのような道のりを振り返る
大一番の韓国戦では、6回に左腕のキム・ユンシクが投じた2球目が背中にドスン。相手投手を睨みつけて悠然と一塁へ歩く姿は、気迫に満ちていた。しかし、13-4と快勝して呼ばれたヒーローインタビューでこのことを聞かれると、「ちょうど凝っていたところにぶつかって、ちょっとほぐれたので、ちょうど良かったと思います」とお茶目なジョークで返答。お立ち台の最後は、自ら日本語で「ニッポン大好き!」と叫んで締めくくり、場内を沸きに沸かせた。
カージナルスでのトレードマークでもある「ペッパーミル」のパフォーマンスは、侍ジャパンの快進撃とともに、日本中を熱狂させている。すっかり日本代表に欠かせない存在となったヌートバー。熱狂のドラマが終わり、チームが解散する時の「しばしの別れ」のシーンは、“号泣回”となること必至だろう。
3.11と佐々木朗希の先発起用
〈サムライの言葉/佐々木朗希の熱投〉
きょう、このマウンドに立てることに感謝
栗山英樹監督は日本ハムの指揮官時代から度々、1つの試合に勝敗以上の「意味」を持たせる選手起用をしてきた。日本での1次ラウンド中に3月11日を迎えるという運命的な日程を知った時点からおそらく、チェコ戦での佐々木朗希の先発起用を意識してきたのではないだろうか。
日本球界の未来を背負う岩手県出身の21歳は、自らも東日本大震災で父と祖父母を失った被災者である。立ち上がりからそのストレートは160km台を連発し、3回2/3を2安打1失点8奪三振でWBCの日本選手で史上最年少の勝ち投手に。震災について、多くのことは語らない右腕だが、ヒーローインタビューでは思いを噛み締めるようにこう話した。
「色々ありましたけど、自分ができることをしっかりやりました。今日、このマウンドに立てることにとても感謝しました」
12年前の「あの日」に思いをはせるとともに、未来への希望も示したマウンドだった。