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現地記者が震えた侍ジャパン“まるでマンガ”の発言録「時には弱さを見せながら」「自分を出していいんだ」…“史上最高チーム”になるまで
posted2023/03/16 11:03
text by
佐藤春佳Haruka Sato
photograph by
KYODO
ワールド・ベースボール・クラシック(WBC)1次ラウンドを4戦全勝で1位通過した「侍ジャパン」。大谷翔平(エンゼルス)、ダルビッシュ有(パドレス)という二人のスーパースターを擁した最強軍団は、その華やかさの一方で、選手たちが口々に「家族のような存在」と表現する温かさも併せ持つ魅力的なチームだ。個性たっぷりの選手たちはいかに“ワンチーム”になったのか。青春マンガのような道のりを選手の言葉で振り返る。
いま思う「世界一を考えない」発言の意義
〈サムライの言葉/ダルビッシュ塾〉
世界一になるためには? 世界一を考えないこと
宮崎合宿の主役は、なんと言ってもダルビッシュだった。メジャー組の中でただ一人、初日からチームに合流して精力的に動き回った。キャッチボール、遠投、トレーニングと、投手陣はその一挙手一投足に目が釘付け。キャンプ2日目にブルペン入りした際には、ネット裏に投手陣が集結してさながら見学会となった。
手本を示すだけではない。チーム最年長の36歳は、佐々木朗希、宮城大弥、戸郷翔征ら若い投手たちに気さくに話しかけ、変化球の握りや投げ方、トレーニング方法などを惜しみなく伝授した。日本ハム時代は強気でとがったイメージだったが、メジャーリーガーとなり、家族も増えた今はそのキャラクターも一変。兄のように、父のようにチームを引っ張るダルビッシュが、「世界一になるために必要なことは?」という報道陣の質問に返したのがこの言葉だ。「世界一を考えない」。それは、史上最強チームという重圧と戦う選手たちへ、気負いすぎずに今を生き、楽しむことの大切さを伝えたものだった。
ダルビッシュ自身、2009年のWBCでは頂点に立っている。12日のオーストラリア戦後、1次ラウンド突破を決めたチームについて、当時と比較して、こんな思いを明かした。