プロレス写真記者の眼BACK NUMBER
アントニオ猪木の格闘ロマンは“14歳の孫”に受け継がれ…「深く、深く感謝」「すべて真似しました」カメラマンが綴る「お別れの会」の情景
text by
原悦生Essei Hara
photograph byEssei Hara
posted2023/03/10 17:04
3月7日の両国国技館。アントニオ猪木の孫・猪木尚登さん(14歳)が、オカダ・カズチカとともに「ダァー!」を叫んだ
藤波辰爾の弔辞「すべてあなたの真似をしました」
藤波辰爾は弔辞の中で猪木に素直な気持ちを伝えた。
「アントニオ猪木になりたい。本気でそう思いました。技も髪型も洋服も、すべてあなたの真似をしました。あなたに出会い、私の人生は大きく変わりました。共に練習をし、タッグを組み、ときには戦いました。そのすべての瞬間が、私の人生の財産です。一人のレスラーとして、あなたに尽くしたくて、超えたくて、大きな背中を追い続けてきました」
そんな藤波も69歳になった。
坂口征二、グレート小鹿、前田日明、蝶野正洋、武藤敬司、棚橋弘至……。新日本プロレスのレスラーだけでなく、全日本プロレスやノアの選手も国技館に勢ぞろいしていた。森喜朗や野田佳彦も参列していた。力道山夫人の敬子さんもいた。
猪木という偉大なプロレスラーとのお別れ。これは儀礼的なお別れに過ぎないのかもしれないが、それでも何かの区切りをつけたいという思いが、遠方からも多くの人々を両国の地に向かわせた。
大阪からトンボ帰りで駆け付けた人もいれば、九州から泊りがけでやってきた人もいた。
何軒も飲み屋のハシゴをしたところで、猪木の話が尽きることはない。
4軒目の店で、猪木のTシャツを着たファンに出会った。「今日は猪木のシャツを着ていると、『両国に行ってきたんですね』と声をかけられます」という。もちろん、彼らもここが1軒目ではない。
猪木という存在が導く不思議な出会い。
見てきた時代は違っても、それぞれに猪木を感じることができる。これもまた、アントニオ猪木の魅力なのかもしれない。
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