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大谷が「天才的」と評す近藤健介の打撃術 卓球、相撲、うどん打ち…父が明かす原点秘話 タダで焼き鳥を食べるためにとった驚きの行動とは?  

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中田愛沙美(道新スポーツ)

中田愛沙美(道新スポーツ)Asami Nakata

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photograph byHideki Sugiyama

posted2023/03/05 11:00

大谷が「天才的」と評す近藤健介の打撃術 卓球、相撲、うどん打ち…父が明かす原点秘話 タダで焼き鳥を食べるためにとった驚きの行動とは? <Number Web> photograph by Hideki Sugiyama

人懐こいキャラクターの近藤。年下の村上(左)ともすっかり打ち解けている

 手先が器用で工作も得意だった。「『やる?』と聞くと必ず『やる』という。何をやらせても上手だった」と義男さん。料理にも興味を持ち、自宅でうどんを打つこともあった。プロ入りした後には、選手会納会ゴルフやボウリング大会でいずれもプロ級の腕前を披露し、チームメートを仰天させている。

大谷翔平が「天才的」と驚いた打撃技術

 コミュニケーション能力にも長けていた。小学校中学年の頃、父は息子の発言に驚かされたことがある。「1学年4クラスある学校で、上も下(の学年)も含めて『ぼくは全部のクラスに友達がいるよ』と言っていてびっくりしたよね」。明るく活発な性格の近藤の周りには、いつも自然と仲間が集まってきた。

 近藤といえば、巧みなバットコントロールと選球眼の良さが持ち味だ。プロ12年目で通算打率・307、出塁率・413。日本ハム時代にはチームメートだった大谷翔平(エンゼルス)がそのバッティングを「天才的」と称していた。先を読み、状況に応じたバッティングが出来るのも大きな強みだ。そんなクレバーなバットマンらしい、幼少期のエピソードがある。

 ある日、近藤少年はどうしても焼き鳥が食べたくなった。しかし手持ちのお金はない。考えに考えた末、妙案を思いつく。まず何軒か先の家からタダで落花生を譲り受け、焼き鳥屋のおじさんに「交換しよう!」と物々交換を持ちかけたのだ。持ち前の人懐こさで、おじさんもあっさり陥落。近藤少年は無事、焼き鳥をゲットした。地元・千葉名産の落花生をタネに、「わらしべ長者」さながら目当てのものを手に入れたわけだ。

 この人懐こさは、高校野球の名門に進学した後も大いに武器になった。軟式野球の強豪・修徳学園中を経て、横浜高校に入学。3年生で主将だった筒香嘉智(レンジャーズマイナー)が率いるチームで1年時から試合に出場し、夏の選手権大会神奈川県大会では打率・438をマーク。バットでの活躍の傍ら、寮生活では母から学んだレシピでチャーハンを作り、先輩たちの胃袋をもガッチリとつかんだ。この頃から親しみを込めて「コンちゃん」と呼ばれ、大いに可愛がられていたという。

 2012年にドラフト4位で日本ハムに入団。高卒1年目から一軍の舞台を経験し、主力選手に成長していく。チーム屈指の「練習の虫」として知られ、本拠地・札幌ドームでの試合後はすぐさまバットを担ぎ、ベンチ裏で打ち込みをするのがルーティン。いくら活躍しても、現状に満足することはなかった。ストイックに野球に取り組み「仕事にしたら辛いな」と周囲に漏らしたこともあった。

【次ページ】 「笑っている姿を見せるんじゃねぇ」

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