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大谷が「天才的」と評す近藤健介の打撃術 卓球、相撲、うどん打ち…父が明かす原点秘話 タダで焼き鳥を食べるためにとった驚きの行動とは?
text by
中田愛沙美(道新スポーツ)Asami Nakata
photograph byHideki Sugiyama
posted2023/03/05 11:00
人懐こいキャラクターの近藤。年下の村上(左)ともすっかり打ち解けている
2021年からは選手会長を務め、グラウンド内外でリーダーシップを発揮した。近藤が主宰している毎年1月の鹿児島・徳之島での自主トレは、弟子入り志願者が年々増えて大所帯に。人懐こい笑顔そのまま、楽しい雰囲気の中での練習かと思いきや、その緊張感たるや新たに参加した選手が必ず「こんなにピリピリするんですか」と驚くほど。「天才的」なバッティングは、ストイックな姿勢と練習量に支えられているのだ。
「笑っている姿を見せるんじゃねぇ」
「TEAM徳之島」と呼ぶ合同自主トレの常連メンバーで、横浜高校の後輩でもある淺間大基が、「近藤先輩についていこう」と決意した出来事がある。入団1年目に一軍昇格したときのこと。敗戦後、ベンチで笑っているようなシーンがテレビ中継に映ってしまい、ロッカールームで近藤から「来い」とブルペンに呼び出された。
「プロとしてやっているんだから、お客さんも見ている。ましてや試合も負けていて、そんなところで笑っている姿を見せるんじゃねぇ」
先輩からたしなめられ、「ハッとさせられた」と淺間。笑顔を見せてしまったのは無意識の行動だったが、「時間を割いてまで僕をしかってくれたというところが、うれしかった」と感謝し、誰に対してもしっかりと意見する姿に「僕もああいう人間になりたい」と心に誓った。
近藤は昨シーズン、節目の通算1000安打&1000試合出場を達成した。新庄剛志監督からの評価も高く、レギュラーは約束されていたが、その環境をあえて捨て、国内、海外フリーエージェント権を行使。5球団の争奪戦の末に、球界屈指の選手層の厚さを誇るソフトバンクで激しい競争に身を投じることを決断した。新天地で緊張感のある春季キャンプを過ごし、2月中旬からWBCに向けた日本代表の強化合宿に参加。2月25、26日に行われたソフトバンクとの壮行試合(宮崎)では、2試合で出塁率10割と持ち味を存分に発揮した。
淡々とヒットを重ねる姿は、まさに侍。これまで出場した国際試合でも2019年のプレミア12では優勝、21年夏の東京五輪では金メダル獲得に貢献するなどバイプレーヤーとしての価値は折り紙付きだ。鈴木誠也(カブス)が故障で出場を断念し、外野のレギュラーとして一層注目が高まる近藤。何でも器用にこなす「野球の申し子」が、かつての恩師と共に侍ジャパンを3大会ぶりの世界一に導く。
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