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「1次リーグ突破も危うい」の6年前…沈黙の“WBC直前ミーティング”で青木宣親が立ち上がって…いま明かされる「試合までのリアル」
text by
佐藤春佳Haruka Sato
photograph byJIJI PRESS
posted2023/03/08 17:00
大一番のWBC「初戦」。その裏側にはどんなドラマがあるのだろうか。前回大会メンバーが明かす
不気味なキューバ「中南米のチームがよくやる手」
一方、待ち受けるキューバ代表は謎に包まれていた。予告先発は、右腕のノエルビス・エンテンザ。当初有力視されていたエースのブラディミール・バノスの先発をあえて回避し、2日前に行われた西武との練習試合で登板していたエンテンザが「中1日」で大役を担った。元来は中継ぎ投手で、先発としては4、5番手の存在と見られていた伏兵だ。
志田がキューバ側の意図を推測する。
「これは日本戦を捨てにきているのだと感じました。中南米のチームがよくやる手で、1次リーグでは絶対に取りに行く試合とそうでない試合を取捨選択してくる。ただ、それでもキューバには怖さがありました。もし日本が序盤に苦戦して勝機ありと見るや一転、リバン・モイネロ(現ソフトバンク)や、ライデル・マルティネス(現中日)など、いわゆる勝ちパターンの投手を一気に突っ込んで勝ち星を奪いにくる可能性がある。スイッチを入れられる前に、こちらの流れに持って行かなければと考えていました」
その不安をかき立てるような出来事が、プレーボールからわずか数分で起こる。日本の先発は石川歩(ロッテ)。その立ち上がりだった。
「菊池の守備」が展開を変えた
先頭打者に内野安打を許し、続く2番、アレキサンダー・アヤラのサードゴロを松田がエラー。あっという間に無死一、二塁となり、打席に3番のフレデリク・セペダを迎える。痛烈な打球は一、二塁間を破るかに見えたが、これをセカンドの名手・菊池がスライディングキャッチ。送球を受けた遊撃手の坂本が一塁へショートバウンドを投げるも、一塁手の中田がこれを難なく捌いて併殺で大ピンチを切り抜けた。
志田は振り返る。