錦織圭、頂への挑戦BACK NUMBER

フェデラーとの惜敗で再起動した錦織。
トップ8で終えた今季の反省内容とは?

posted2015/11/26 10:40

 
フェデラーとの惜敗で再起動した錦織。トップ8で終えた今季の反省内容とは?<Number Web> photograph by Hiromasa Mano

破れはしたがお互いに試合を心底楽しんだという雰囲気で、試合直後にフェデラーと笑顔を交わした錦織。

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山口奈緒美

山口奈緒美Naomi Yamaguchi

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Hiromasa Mano

 2015年のツアーファイナルズは、シーズンを総括するようにノバク・ジョコビッチとロジャー・フェデラーの今年8回目の対戦で彩られ、王者ジョコビッチの栄冠で幕を下ろした。今大会で錦織が敗れたのはこの2人であり、全米オープン以降「モヤモヤしていた」錦織を目覚めさせたのもこの2人と言っていいかもしれない。

 1勝1敗で迎えたラウンドロビンの最後の一戦、1年ぶりにフェデラーと対峙した錦織は試合が進むにつれて本来の躍動感を高めていった。結局5-7/6-4/4-6の惜敗だったが、今大会のベストマッチではなかっただろうか。フェデラーはこの試合に勝っても負けても準決勝進出がすでに確定しており、そのフェデラー優位の中でたとえ錦織が番狂わせを起こしたとしても、のちにジョコビッチがトマーシュ・ベルディヒに勝ちさえすればフェデラーとジョコビッチが準決勝進出というごく順当な結果になることは決まっていた。大勢には重要な意味のない一戦と見られるのは無理もなく、残念ながら記者席は日本のメディア以外ほとんどおらず、ガラガラ状態。客席も上方は空席が目立った。しかし、観た人をたっぷり得した気分にさせるエキサイティングなゲームだったことは間違いない。

錦織らしさを取り戻せた、フェデラーとの対戦。

 錦織はフェデラーのセカンドサーブでのポイント獲得率70%という高い数字を叩き出し、最強レシーバーの実力を久しぶりに見せてくれた。フォアハンドもバックハンドもウィナーの数でフェデラーを上回る攻撃力、スピードを生かした高度なディフェンス……見たかった錦織圭が戻って来たのだ。

 入場するときよりもはるかに大きな拍手と歓声で送られた錦織は、試合後「自分のテニスが戻って来た実感がある。これでなんとか来年持ち堪えられるかな……」と話したが、ここ数カ月間、来シーズンに対する不安を少なからず抱いていたことがそこからはうかがえた。

 だが、試合前に話した通り「昔見ていたスーパースター」であるフェデラーへの挑戦を楽しんでもいた。

「スーパーショットを決められるたびに、悔しいのは悔しいんですけど、同時に楽しさも感じていました」

【次ページ】 錦織との勝負を刺激にする、フェデラーの余裕。

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