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ジョコビッチが34歳に 爆撃跡で練習、クラシック音楽を聞かせる……ユニークすぎた“テニスのお母さん”とは?
posted2021/05/22 11:02
text by
山口奈緒美Naomi Yamaguchi
photograph by
Getty Images
3月8日、セルビアは祝賀ムードに包まれていた。国民最大の英雄であるノバク・ジョコビッチが、世界ランキング1位の在位期間でロジャー・フェデラーの持っていた最長記録を塗り替え、311週目に突入した日だ。
「僕の人生にかかわるすべてのすばらしい女性たち」
ベオグラードで両親が営むレストランの周辺にはファンがひしめき、花火が打ち上げられ、大きなビルの壁をスクリーンとしていくつものメモリアルなシーンが映し出された。ジョコビッチはレストランのバルコニーから親しい人々に語りかけた。
この日、ジョコビッチはこの祝祭の前に「記念すべき日」と題してこんなコメントをツイッターに投稿した。
「今日は同時に、エレナ、タラ、僕の母、エレナ・ゲンチッチ、僕の人生にかかわるすべてのすばらしい女性たち、そして世界中の女性たちを祝福しよう。あなたたちの行い、あなたたちの存在に、感謝を捧げたい」
この日は<国際女性デー>であった。少なくとも日本よりはこの記念日を認知している国々でも、その意義に思いを寄せて何かを発信したテニスプレーヤーが他にいただろうか。こういうところが鼻につくという人もいることは否めないのだが、ジョコビッチの生い立ちや普段の言動を知る人なら、唐突な女性賛美でないことはわかる。この日成し遂げたテニス史に耀く偉大な記録が、愛する女性たちに支えられたものであることをジョコビッチは感じていたに違いない。ドラマチックな暦の巡り合わせだった。
ジョコビッチが「テニスのお母さん」と呼ぶ人
エレナは妻、タラは娘、そして固有名詞の最後に挙げられたエレナ・ゲンチッチとはジョコビッチが「テニスのお母さん」と呼ぶ人生最初のコーチである。先週ローマで行われたイタリア国際でもゲンチッチについて語っていた。
「すごく早い時期から僕は鍛錬と自律の習慣を養ってきた。両親の教育はもちろん、僕にテニスの基礎を全て教えてくれたエレナ・ゲンチッチの指導のおかげで、僕は愛するテニスに集中し、全力を注ぐことができたんだ」