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「無能と批判された指揮官が“新たな戦略”を」「戦術面の積み上げ不足が…」W杯ドイツ、スペイン撃破の舞台裏〈日本代表取材ライター対談〉
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NumberWeb編集部Sports Graphic Number Web
photograph byJFA/AFLO
posted2023/01/02 17:01
スペイン戦後、喜びをあらわにする日本代表イレブン
三笘のウイングバック、交代5人制については…
木崎 ちなみに3バックについては三笘が“僕たち自身もここで3バックをやるとは思ってなかったです”と話していたんですよね。戦術練習では取り組んでおらず、ミーティングで伝えたり、試合で少し試したくらい。それを大一番のドイツ戦で実行して成功させるって、サッカーの常識を覆したと言えますよね。
飯尾 森保監督はウイングバック起用について、“伊東純也は代表で少しやったことがある。三笘はサン・ジロワーズ、ブライトンでも当初ウイングバックで起用されていたから、問題なくできる”と思っていたそうです。正直なところ、本当に代表チームで同じようにできるのかとは思っていましたが(笑)、本当にパッとできたのだからすごいですよね。
木崎 だから今後は、試合など表には出さないで練習だけで隠れてやっていく、という試みも増えるのかもしれない。
飯尾 あと交代策について少し掘り下げると、コロナ禍を経て2020年から「交代5人制」となりました。欧州各国リーグやJリーグでも大胆な3枚同時交代などをよく見るようになりましたが、代表戦がなかなか開催できない時期もあったことから、森保監督は5人交代制をあまり経験できていなかった。
例えば4位に終わった東京五輪では交代枠を残したこともあったし、劇的に流れを変えるような交代もなかったので、あの頃は5人交代の利点をまだ理解していなかったのかなと。ただその経験や最終予選を経て、この5人枠を有効に使わなければいけない、と感じたんじゃないですかね。W杯での日本は5人交代の利点を最も生かしたチームのひとつでしたから。
ノイアーも反応できなかった“浅野のニア上”の真相
木崎 そういう意味で、この交代策は再現性があるのかということは今後も面白い視点になるかなと思っています。ドイツ戦についてはもう1つ、浅野拓磨の決勝点にも触れておきたいんです。実は2014年ブラジルW杯のドイツvsフランスの終了直前に似たような場面があって、その際はベンゼマのシュートをノイアーがセーブしていたんです。
飯尾 ああ、あったかもしれない。
木崎 はい。ベンゼマがニア上を狙うシュートを放った際にノイアーは読んでいて、とっさに手を上げて防いだんです。この時はノイアーの読み勝ちだったんですが、今回の浅野にはブチ抜かれているじゃないですか。浅野のドイツ戦後のコメントを教えてもらったんですが、「正直ニア上を狙ったわけではないですけど、思い切って蹴った結果があそこにいった」と言っていたそうです。
飯尾 狙っていなかったんですね(笑)。
木崎 狙っていないからこそ、ノイアーが反応できない。浅野の思い切りの良さが、結果的に世界最高のGKの読みを外した。普通にいけば股下だろう、とノイアーも両足でガードしていたんだけど……。
飯尾 最高の場所に打ち込んだ。でも下手すればノイアーの体にブチ当てたかもしれなかった(笑)。そう考えると、やっぱりサッカーはわからない。