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「無能と批判された指揮官が“新たな戦略”を」「戦術面の積み上げ不足が…」W杯ドイツ、スペイン撃破の舞台裏〈日本代表取材ライター対談〉
posted2023/01/02 17:01
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NumberWeb編集部Sports Graphic Number Web
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JFA/AFLO
“弱者”から“強者”のサッカーに変貌したドイツ戦
――大会前の日本代表は紆余曲折がありながらも、9月シリーズで選手と指導陣のギャップを徐々に埋めていってカタールW杯を迎えました。第2回では日本代表のグループステージについて振り返っていければと思います。
木崎 まずはドイツ戦からですね。
飯尾 前半終了時、僕は記者席で頭を抱えていました(苦笑)。
木崎 よく0-1で済んだな、という内容でしたからね。ペナルティエリア内で何度もシュートを打たれましたし、ムシアラにも決定機がありました。オフサイドになったハバーツのシュートが決まっていたら後半のプランが崩れていた可能性がある……。
飯尾 だけどこのチームがすごいなと感じたのは、ドイツ相手に森保監督、選手たち全員が「前半終了時点で0-1ならOK」と思っていたという点です。普通の感覚なら“1点取られた時点でアウト”となるはずなのに、よほど自信があるんだな、と。
木崎 たしかに「0-1ならOK」と思っていたからこそ、前半に失点しても慌てずに乗り切り、後半の逆転劇が生まれた。ドイツ戦、森保監督最大の功績は「90分における戦術運用」という戦略だったと感じます。前半の4バックから後半に入って3バックに変更しました。
このようなシステム変更自体はよく見ますが、戦い方が「弱者のサッカー」から「強者のサッカー」へと、まるでジキルとハイドのように変わったんです。それどころか最終的に1トップ2シャドーに加えて両サイドに三笘薫と伊東純也、ボランチの一角に鎌田大地と、6人もアタッカーを置くような形になった。
戦略が武器なら、手の内を明かしたくない。ならば
――サッカーでは「プランA、プランB」という表現がありますが、「チームA、チームB」というほどの違いでした。
飯尾 まさに。試合の中でガラッと変える。
木崎 超ドン引きから超ハイプレス+ポゼッションへの変化について現地誌『シュピーゲル』は「計算されたカミカゼ」と表現していました。ドイツ戦までまったく見たことがない布陣だったので僕自身、“ダマされた!”と思ったほどですが、実際にピッチで戦っているドイツはその印象がさらに強かったはず。
実は僕は4年前に小説『アイム・ブルー』で、監督のサインによって「ベタ引き」、「ハイプレス」、「プログレッション」(縦に速く攻めるポゼッション)を試合中に使い分けるという話を書いていたんですね。それがまさか現実世界で見られるとは(笑)。5人交代制を生かして戦い方を大きく変更するやり方は、森保監督の発明と言ってもいいと思います。
飯尾 “無能”と批判されてきた指揮官が、新たな戦略を編み出したのかもしれないですね。
木崎 戦略が武器の監督からしたら、手の内を明かしたくない。ならば本番まで隠し続けるという選択肢を取ったとしてもおかしくありません。
飯尾 森保監督はサンフレッチェ広島の監督時代に書籍を出しているんですが、そこには“私は会見などでメディアに対して本音を喋る理由はないと思っている”と記されています。そういった考えは、今も多分にあるのでは。