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森祇晶に野村&落合も…名将に愛された辻発彦(西武前監督)が語る“最強軍団のリアル”「森さんがテトリスを」「ぶっちゃけお給料は…」 

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佐藤春佳

佐藤春佳Haruka Sato

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photograph byYuki Suenaga

posted2022/12/22 11:01

森祇晶に野村&落合も…名将に愛された辻発彦(西武前監督)が語る“最強軍団のリアル”「森さんがテトリスを」「ぶっちゃけお給料は…」<Number Web> photograph by Yuki Suenaga

埼玉西武ライオンズの監督を今季限りで退任した辻発彦氏にインタビュー(前編)

「野村IDってどんなものなのか、凄く興味があったんです。ヤクルトでは色々なことを発見できました。あの頃の野村さんは、選手一人ひとりを把握して色々なアドバイスを送っていた。相手の配球を読み解いて球種やコースについて細かく指導していた選手もいましたが、僕には何も言わなかった。『お前はそんな選手じゃない。ヤマを張って打つタイプじゃないだろ』ってね。確かにそうだな、と」

 忘れもしない。移籍1年目の1996年、2月25日のオープン戦の初戦でのこと。その年38歳を迎える大ベテランに、野村監督は先発出場を命じた。

「小雨が降る中、宮崎の都城で相手は広島カープでした。本当に寒くてね。まさか僕がいくとは思わなかった。なんで? と思ったらニヤリと『どんなもんか、見たかったんや』って」

 2死二塁で迎えた打席。3ボール(3-0)になり、普通は見送る球を強振した。結果はレフトフライ。ベンチに帰ると、名将は「頭では勝ったな。でも技術が伴わなかったかな」と声をかけ、愉快そうに大笑いした。

「オープン戦だし、ランナーは二塁。フォアボールでいい。ピッチャーもどうせ打ってこないだろう、と投げてきたところを打った。あんな場面でバットを振ったのは人生初でしたよ」

 まだ2月のオープン戦で、野村監督が大ベテランに「結果」を求めていたわけはない。3ボールからの強振に、辻の衰えることのない「本能的な読み」と相手の裏をかく勝負心を見て、名将はほくそ笑んだのだ。後に野村監督は、「辻監督」の船出に誰よりも大きな期待を寄せていた。生前に選んだ「平成の最強ベストナイン」の二塁手に迷わず「辻発彦」の名前を挙げたのは言うまでもない。

名将4)落合博満…「絶対に妥協しない方」

 もう一人、影響を受けた指揮官と言えば、腹心として仕えた落合博満の名前も外せないだろう。2007年から3年間、中日ドラゴンズの二軍監督を担い、2010、11年はその“右腕”として一軍の野手部門を任された。実は日本通運浦和時代の18歳の頃、東芝府中から補強選手として来ていたのが落合だった。濃い縁の中で信頼を受け、大役を任命された。

【次ページ】 二軍で優勝時に…落合監督の素顔

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