「絶対に妥協しない方でした。落合監督がコーチに求めたのはとにかく選手を見ること。キャンプで練習していて、選手がたった1人でも練習場に残っているなら、コーチは必ず残って見ておけ、と。紅白戦をして、負けた方がグラウンドを何十周、と決めたらたとえ球場が真っ暗になってもやらせる。コーチをポール側に立たせてね。お腹が空いてパンを食べながら走っていた選手もいましたよ。二軍監督だった時は、落合監督から『誰か一軍に上げる選手いないか？』と聞かれて、『いません』と答えることもよくありました。本当に今調子がいいと確信できる選手しか推薦しなかった。そこもちゃんと納得してくれましたからね、落合さんは」

野手部門のヘッドコーチ格、三塁ベースコーチとして落合博満を支えた　©BUNGEISHUNJU

二軍で優勝時に…落合監督の素顔

　周囲からは「冷徹」とも言われた“落合流”の中で、指揮官の温かな情に触れることも多かった。

「常に選手のことを一番に考えている。コーチに対しても、給料上げてくれ、と球団に直談判してくれたこともありました。ぶっちゃけ他の球団よりお給料は良かったですよ。それだけ高いレベルを求めるからこれだけ払うんだ、って。選手にしてもコーチにしても、しっかり結果を出せばお金が上がるし、できなければ落ちる。その点ははっきりしていました。そういえばファームで優勝した時に『落合さん、二軍でもビールかけしていいですか？』と聞いたら、『おう、やれやれ！』って。宿舎の横でバーベキューしながらビールかけ……いい思い出ですね」

©Yuki Suenaga

　名将に認められてきた男は、満を辞して2017年、西武の監督に就任する。チームは前年まで3年連続Bクラス。これだけの選手が揃っていながらなぜ勝てないのか――。歯痒い思いで古巣の低迷を見ていた辻新監督は、チームを観察するうちに決定的な“穴”に気づいた。〈つづく〉

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