話が終わったらボールを蹴ろうBACK NUMBER
PK終戦の瞬間、堂安律は何を思ったのか? エースになりきれなかった男が口にした“無力さ”「先輩たちと1試合でも多くやりたかった…」
posted2022/12/06 20:00
text by
佐藤俊Shun Sato
photograph by
Tsutomu Takasu
PK戦が終わり、日本が敗れるとサイドライン上で肩を組んでいた選手たちがセンターラインに立つ選手たちに向かって歩いていった。ピッチ上では南野拓実や三笘薫が泣き崩れ、浅野拓磨もユニフォームで涙をぬぐっていた。
堂安律は、ひとりサイドラインの手前でしゃがみこみ、動けないままでいた。
スタッフに肩を叩かれ、促されてようやく歩き出したが、力ない歩みは、敗戦のショックの大きさを物語っていた。
選手とスタッフ全員で歴史を変えたい、それしかない
決戦前夜、堂安の気持ちはたぎっていた。
「勝ちたい。本当にその気持ちが強い。選手とスタッフ全員で歴史を変えたいという気持ちが強いですし、それしかないですね」
夢の舞台で個人の野心もあるが、過去3度、ベスト8の壁を越えられず、誰も見たことがないベスト8の景色を見ることはプレイヤーとしては最高の勲章だ。そのチャンスが巡って来た、そして、その一員でありたいと思うことが堂安のやる気をより一層かき立てていた。
クロアチア戦の前半は、その勢いそのままにアグレッシブにプレーした。
前半は攻撃でいい形ができたと思います
スタメン出場はコスタリカ戦以来だが、あの時は自分らしさを発揮できなかった。ボールを持てるがゆえに足元にこだわりすぎてしまい、裏を狙って走るなど動きの変化が必要だと反省した。クロアチア戦はボールを保持できる時間が増えることを予想し、自らビッグチャンスを作りたいと考えていた。
その思いがセットプレーで実を結んだ。