話が終わったらボールを蹴ろうBACK NUMBER
PK終戦の瞬間、堂安律は何を思ったのか? エースになりきれなかった男が口にした“無力さ”「先輩たちと1試合でも多くやりたかった…」
text by
佐藤俊Shun Sato
photograph byTsutomu Takasu
posted2022/12/06 20:00
敗戦後の堂安。その目には光るものがあった。途中交代でピッチ外からPK戦を見守った堂安はその瞬間をどう迎えたのか
ドイツ、スペインを打ち破り、その2試合で2ゴールを挙げた堂安は快進撃・日本代表の象徴的な存在になった。だが、最大の目標だったベスト8の壁を越えられなかったことに堂安は、悔しさを押し殺したような表情でこう語った。
「負けたらドイツ、スペインに勝ったけど、みたいな慰めが入るだろうと思っていましたし、絶対そうはさせないという気持ちで試合に入りました。いくら強豪国に勝っても歴史を変えることができなければ、全てがゼロになるわけじゃないですけど、僕からしたらそれは正直意味ないです」
今日の試合に関して言えば全然差は感じなかった
堂安は、ドイツ、スペインに勝ったことを軽視しているのではない。この2カ国の強さは圧倒的で、その差は大きいと認めている。
「正直、ドイツ、スペインでやったときはわずかの差ではなかったです。大きな差を感じながらやっていました。あれが戦術だって言ってしまえば済むんでしょうけど、日本はあれをずっとやりたいわけじゃない。でも、今日の試合に関して言えば全然差は感じなかった」
だから余計に悔しいのだ。
先輩方と1試合でも多くやりたいという気持ちがありました
その悔しさには、このメンバーでもう戦えないという理由もある。堂安は、長友佑都や吉田麻也らベテランと呼ばれる選手と食事などで同席し、多くを学んできた。プレーだけではなく、言葉や姿勢からも代表選手として得るものが大きく、自分が好きにプレーできているのも先輩方のおかげという気持ちが強かった。
「僕には、まだ4年後があります。ただ、このメンバー、この26人で戦えるのは今大会が最後になります。本当に素晴らしいアドバイスをくれる先輩方がいたので、その先輩方と1試合でも多くやりたいという気持ちがありました。この場で切り替えて4年後、頑張りますって安易に言えるような感情じゃないですね」
先輩選手の表情が思い浮かぶのか、感傷的な言葉が溢れてくる。