話が終わったらボールを蹴ろうBACK NUMBER
PK終戦の瞬間、堂安律は何を思ったのか? エースになりきれなかった男が口にした“無力さ”「先輩たちと1試合でも多くやりたかった…」
text by
佐藤俊Shun Sato
photograph byTsutomu Takasu
posted2022/12/06 20:00
敗戦後の堂安。その目には光るものがあった。途中交代でピッチ外からPK戦を見守った堂安はその瞬間をどう迎えたのか
ここで負けてしまったのは残酷ですし、憎い
だが、いつまでも沈んでいるわけにはいかない。24歳の堂安は、次の日本代表を背負って戦う使命がある。そのためには、何がベスト16を超えるために足りなかったのか。今回で4度、ベスト8前で跳ね返されたことを、どう考えているのか。
「W杯は、夢の舞台だったので、今までにないアドレナリンを感じながらやっていましたし、結果も出ていたので、うれしさもあり、いい思い出が多かった。でも、ここで負けてしまったのは残酷ですし、憎いなって思いました。4回目は、運が悪かっただけでは済まされない。何が足りないのか、これから考えていきたい」
直感的に多くを答えられる選手だが、言葉が出てこないのは自分の中で整理する時間が必要なのだろう。
僕が下を向いていてもダメ。しっかり顔を上げて行きたい
ミックスゾーンでは、重苦しい空気が流れる中、選手たちが気丈に話している。
最後に、堂安に聞いた。
PK戦が終わり、サイドラインで座り込んでいた時、何を考えていたのか。
「自分がPKを蹴れるようにピッチにいれなかった無力さです。自分が本当にエースを狙いたいのであれば、あそこのピッチに立っていないといけない。PKを外しても決めても自分のせい、自分のおかげと思われる選手になりたい。 そうなれなかった無力さを感じました。ただ、次のチャンスがある僕が下を向いていてもダメ。ベテランの選手に失礼な態度を取りたくないので、しっかり顔を上げて行きたいと思います」
堂安は、そういうと背中を丸めるようにして歩いて、ミックスゾーンから消えていった。
何かもっと言いたかったのではないか。
もっと何かを残したかったのではないか。
エースになりきれなかった8番の寂しそうな背中は、まだすべてを出し切れていない、そんな後悔とW杯への未練を漂わせていた。
記事内で紹介できなかった写真が多数ございます。こちらよりぜひご覧ください。