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「冗談抜きで優勝を目指してます」堂安律はなぜあんなにギラギラしている? 負けず嫌いのサッカー小僧が日本の主役になると誓った日
text by
安藤隆人Takahito Ando
photograph byJFA/AFLO
posted2022/12/03 11:02
ドイツ戦に続き、スペイン戦でも反撃の口火を切る同点ゴールを決めた堂安律(24歳)。試合後、自身のTwitterで「優勝」を宣言した
随分とギラギラしている選手だな――筆者が「堂安律」という才能を初めて見たのはガンバ大阪ジュニアユース時代の中学3年生の時だ。当時からとにかく負けず嫌いで、勝っても負けても自分のプレーに満足しないサッカー小僧だった。
そんな堂安のキャリアを振り返る中で、印象深い出来事として記憶されているのが当時16歳(高1)で出場した2014年AFC U-16選手権(タイ・バンコク)だ。翌年のU-17W杯出場を懸けたアジア最終予選を兼ねる大会で、堂安は左サイドバックとして出場していた。当時のメンバーには冨安健洋、田中碧とカタールW杯で共に戦うメンバーもおり、5大会連続のU-17W杯出場の可能性は高いと目されていた。
しかし、出場権獲得が懸かった準々決勝の韓国戦でまさかの敗戦。前回のロシアW杯にも出場し、カタールW杯では韓国のTVで解説者を務めているイ・スンウ(現・水原FC)の個人技にズダズダに切り裂かれる形で2失点を喫した。
「本当に、何やっとんねんって…」
堂安はタイムアップの瞬間、その場でうずくまった。
「悔しいです。何もできなかった。本当に何も出来なかった。本当に、何やっとんねんって……」
16歳の少年は目を真っ赤に腫らし、人目を憚らずに涙を流した。
この大会を機に、強気な発言がいっそう増え、目つきが鋭くなったような気がする。後にこんな風にその経験を振り返っている。
「その映像は今もたまに流れますが、本当に悔しいし、自分の無力さを感じた。あのシーンは本当に忘れられないし、当時の自分を振り返ると日本を代表する覚悟が足りなかったなと思いますね。でも、あの経験があったからこそ、人一倍世界を意識するようになった。早く僕も海外に行って、同年代の選手には誰にも負けたくないと強く思うようになったんです。
世界で戦うには組織力も大事だけど、個の力も絶対に必要。あの時のイ・スンウのように一人でチームを勝たせてしまう存在になりたいし、周りから『あいつに渡せば何とかなる』という能力を高めたい」