「人生を振り返ったとき、ユースの3年間はすごく濃くて。サンフレユースは1学年10人。24時間一緒に生活していたので、家族みたいな存在なんです。助け合いながら切磋琢磨してきたから、誘うならあいつらだなって」

　真っ先に思い浮かんだのは、「シゲ」こと重行拓也だ。

　ユースで同期だった重行は城西国際大学へ進学後、関東リーグ1部のVONDS市原を経て、オーストラリアのセミプロリーグで3年間プレーしていた。

　ともに海外で戦う者同士。連絡もしょっちゅう取り合っており、重行もそろそろ潮時だと感じているふうだった。

「そのとき26歳。第一線で活躍しているわけではなかったから、セカンドキャリアを考える時期だと思うんです。YouTubeを始めるのは無謀なことかもしれないけれど、僕はやりたかったので。まずはシゲに話してみたら、『面白そうだね』って。チャレンジしてもいいんじゃないかって言ってくれて」

　圭悟の頭の中には、もうひとりの顔が浮かんでいた。「タカ」こと、藤井貴之だ。

　藤井もまたユースの同期で、大阪出身でノリが良く、どうしても一緒にやりたい人材だった。

　とはいえ、藤井はくすぶっているわけではなかった。日本体育大学を卒業後、J3の鹿児島ユナイテッドでJリーガーになっていた。当時はJFLの奈良クラブにレンタル移籍中だったが、試合経験を積んで鹿児島に戻るという未来もあるはずだった。

「だから、『お前にはまだ先があるから、サッカーを辞めろとは言わない。もしやりたいと思ったら、一緒にやらない？』と言ったら、すぐ『やるわ』って（笑）」

　タカもまた、サッカー選手としての未来を描けなくなっていたのかもしれない。

登録者24万人を誇る人気YouTuber「LISEM」のメンバー。左からタカ、けーご、シゲ（写真提供／株式会社LuaaZ）

「LISEM」の由来は？

　グループ名は、かねてから温めていたものがあった。

　LIFE IS SHORT ENJOY MORE――。

　人生は短いから、もっと楽しめ。

　その頭文字を取って「LISEM（リゼム）」とした。

「ゲームの広告かなんかで、Life is Short play moreって流れたんですよ。それを見て、これ、面白いなって。まさに自分も、『人生は短いから、もっと楽しまないと』と思っていたところだったので」

　初投稿は20年1月3日。「LISEM CHANNEL出陣！！！」と題されたその動画で、3人は熱く所信表明をしている。

　そして、ここからLISEMの快進撃が始まっていく……ほど、世の中は甘くない。

「1年目は全然ダメでした（苦笑）。知り合いのサッカー選手に次から次へと出てもらおうと思っていたら、コロナ禍になってしまって。4、5カ月後にはバイトを始めないと生活できないような状況でした。タカは野性的な部分があるからそれすら楽しんでいたと思うんですけど、シゲはメンタル、来てたかもしれないです。僕が誘ったので、なんとか軌道に乗せないとなって」

©︎Miki Fukano

　ゲストを呼べないので、技術系の動画を制作することにした。圭悟は広島アカデミー歴代トップ3のキッカーと言われるほどの、プレースキックのスペシャリストである。錆びることのないキックを取り入れた動画を作り、少しずつ認知されていく。

　すると、20年6月にアップした「高校日本一経験者3人なら素人2人をチームに入れてもフットサル大会優勝できる説」が初めてバズった。サッカー未経験で野球経験者の素人が3人のサポートを受けて活躍する、という企画の面白さが受けたのだ。人生が変わり始めた瞬間だった。

　だが、本当の意味で人生が変わるのは、2年目を迎えてからだ。

　きっかけはWINNER'Sへの加入である。

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