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やめるとなったら、なぜ勝てる? ずば抜けた速さで今季最終戦に勝利したスズキが、ついにMotoGPから撤退する理由とは
text by
遠藤智Satoshi Endo
photograph bySatoshi Endo
posted2022/11/10 17:00
最終戦バレンシアGPで優勝したリンス。ヘルメットにはチームスタッフそれぞれの表情がデザインされている
そのため、ファクトリーチームで働くメカニックやスタッフは、エンジン内部を見ることもなく、例えばどんなピストンを使っているのかを知ることはない。それだけトップシークレットの塊なだけに、スズキがいまのMotoGPマシンがどうなっているかを公開すれば、世界中のレースファンが喜ぶと思うのだ。
ラストランで優勝したリンスは、こう語った。
「今シーズンを最後にスズキはMotoGPから去るが、これ以上ない形で締めくくることができたし、優勝したことを誇りに思う。この数年間、スズキと一緒にたくさんのことを学んできた。これからはレース人生の新たなスタートを切るが、みんなに感謝している」
生え抜きのエース、そしてムードメーカーとして、スズキをMotoGPクラスのトップコンテンダーに引き上げた。2020年シーズンは後輩のジョアン・ミルがタイトルを獲得したが、タイトルを獲得できるマシンに仕上げたのはリンスの功績だ。
感謝と涙のラストラン
スズキのラストシーズンを受け持つことになった佐原氏は、開幕前日にこうも語っていた。
「20年にミルがチャンピオンを決めたときは現場にいなかったので、自分としては今年のオーストラリアの優勝が一番印象深いレースになった。コンストラクターズのトロフィーを受け取るために表彰台にも上がることができたし、本当に忘れられないレースだった。スズキをこれまで応援していただき本当にありがとうございます。ここまでやってこられたのはみなさんの応援があったからこそ。これがスズキにとっては最後のレースになるけれど、これからも、好きなチーム、ライダーを応援して盛り上げてほしい」
リンスとミルのヘルメット、そしてGSX-RRには「ありがとう」の感謝のことば。そしてスタッフの写真がデザインの中に埋め込まれていた。苦楽をともにしてきたスタッフにとっては、涙涙涙のラストラン。記憶に残る優勝で、スズキの最高峰クラス(500cc/MotoGP)での勝利数は97となった。
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