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<MotoGP・史上最年少王者の素顔> マルク・マルケス 「始まったばかりの最速神話」
text by
富樫ヨーコYoko Togashi
photograph byOsamu Kidachi(Grove)
posted2013/12/06 06:02
最高峰クラス1年目にして、快進撃を支えた速さの秘訣とはなにか。
新王者の肉声と関係者の証言により、強靱な素顔が浮かび上がった。
「オレ! オレ!」
地響きのような歓声が観客席を揺るがす。地元スペインのヒーロー、マルク・マルケスが3位でチェッカーを受け、史上最年少チャンピオンを決めた瞬間、10万人が集まったリカルド・トルモ・サーキットの観客席では爆竹が鳴り響いた。弱冠20歳の若き王者は、ファンの前で何度も両手を突き上げて喜びを爆発させた。
「まだ実感がない。まさか1年目にチャンピオンになれるとは思ってもいなかった。今日、僕は抑えて走るということを学んだ。タイトルを取るためには3位でもいいと分かっていたけど、本当は僕もトップ争いのバトルに加わりたかったんだよ!」
最終戦にまでもつれ込んだタイトル争いの舞台となったバレンシアGP。ホルヘ・ロレンソに4ポイント差をつけて王者を決めたレース後の記者会見で、マルケスは弾けるような笑顔を見せた。
シーズン開幕前、チャンピオン候補にはロレンソとダニ・ペドロサの名が挙げられていた。ともにスペイン人だが、そこにマルケスの名前はなかった。Moto2タイトルを獲得してMotoGPに昇格したばかりの彼にとって、今年はあくまでも “学習の年”だったはずなのだ。
「開幕前はレースで5位争いができればいいと考えていた。でも、去年僕がMoto2のタイトル争いをしている時に、中本(修平・HRC副社長)さんが『マルクには来季の開幕戦で表彰台に上がってもらう』と言っているのを聞いてすごく嬉しかった。ホンダが僕に期待してくれているというのは光栄で、励みになったんだ」