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「趣味はバイクトレーニングと釣り」CBR1000やCRF250を所有する練習の虫・小椋藍が市販レーサーでトレーニングに励む理由
posted2025/12/19 17:01
モタードでトレーニングを行う小椋
text by

遠藤智Satoshi Endo
photograph by
Satoshi Endo
最終戦バレンシアGPが終わって1カ月が過ぎようとしている。今年は全22戦という史上最多の開催数に加え、スプリントと決勝の2レースをこなすハードスケジュールの中で、MotoGPクラスの選手たちのストレスと疲労もまた、過去最大だったのではないだろうか。
そしてシーズンを終えてしばらく休養を取った選手たちは、そろそろ来季に向けてトレーニングを開始している。誰がどれだけトレーニングしているかはわからないが、日本のエース小椋藍の練習量は、おそらくMotoGPクラスのライダーの中でトップクラスではないかと思う。
最終戦が終わって帰国してから、藍はほとんど毎日バイクに乗っている。天候にもよるが、週平均で4日から5日。先日、モビリティリゾートもてぎのロードコースでスポーツ走行を行ったときは「今週は6日走りました」と語っていた。
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もてぎのスポーツ走行で使用するのは1000ccの市販ロードマシン。スポーツ走行日をチェックし、予約を入れて走行券を購入する。ライダーのレベルと走るマシンによってクラス分けはあるが、走行時間は30分で通常1日2回の走行枠がある。MotoGPライダーの藍にとっては物足りないが、MotoGPを始めとする世界選手権の各カテゴリーにはテスト日数や禁止期間など制約が多く、ライダー自身がルールに抵触しない条件でロードコースを走ることになるのだ。
その他、モトクロス、ダートトラック、ショートサーキットでのバイクトレーニングと、藍はその目的に応じて10台以上の練習用バイクを所有している。もてぎのスポーツ走行は事前に予定しなければならないが、藍が子供のころからホームコースとする埼玉県の桶川サーキットやオフロードビレッジなどは、その日の天気を見て「今日はこのバイクであそこに行こう」と決めることが多いという。
マルク・マルケスが及ぼした影響
オフロードトレーニングでは、藍が後輩たちにも声をかけて一緒に走ることが多い。その後輩たちもMotoGPライダーと一緒に走るのを楽しみにしており、あっという間に何人ものライダーが集結してレベルの高いバイクトレーニングとなる。
ライダーたちのこうしたトレーニング風景はヨーロッパでは珍しいことではない。今季MotoGPクラスでランク1位と2位のマルケス兄弟が連日バイクトレーニングや自転車トレーニングに励む姿は有名で、それに倣う若い選手は多い。
世界を舞台に戦うライダーたちのモトクロスやダートトラック、ロードコースによるトレーニングが大きく注目されはじめたのは、マルク・マルケスがMotoGPクラスにデビューした2013年あたりからだったと思う。それまでも同様のトレーニングを行うライダーはいたが、大会開催数が増えた上、テスト禁止期間や日数制限が導入されて走る機会はどんどん削られ、多くのライダーがオフロードコースやロードコースでルールに抵触しない市販車に乗って頻繁にトレーニングするようになったのだ。

