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《最速インタビュー》小椋藍、来季アプリリアでMotoGP参戦決定…Moto2タイトルにこだわる23歳が明かす決断の理由「ホンダ、Moto2とで悩んだけれど…」
posted2024/08/16 17:02
text by
遠藤智Satoshi Endo
photograph by
Satoshi Endo
Moto2クラスで活躍する小椋藍が来季、アプリリアのサテライトチームであるトラックハウス・レーシングからMotoGPクラスに参戦することが発表された。リリースが出たのは8月15日の午前11時。小椋はその30分ほど前に、オーストリアGPの開催地レッドブル・リンクに到着したばかりだった。
小椋のトラックハウス入りとMotoGP参戦は、イギリスGP開幕前の7月下旬にスペインのマスコミによってリークされていた。その時点で小椋に「アプリリアと話をしているの?」とメッセージを送ったら、「話はしています」とだけ返事が来た。
そしてイギリスGP開幕前日の8月1日にシルバーストーンのパドックで会ったとき、彼は「いまはなにも話せない。発表されたらすべて話します」と言ってくれたので、それ以上、僕から聞くことはしなかった。
小椋はそのときの約束を覚えていて、自身が契約するアライヘルメットのトレーラーのオフィスで、発表直後だというのに快くインタビューに応じてくれた。
最初に決断の時期とその理由を訊ねた。
「(シーズン前半戦最後の)ドイツGPが終わり、夏休みで帰国してすぐでした。ホンダからの(MotoGP昇格の)オファーに対する返答期限が迫っていたし、トラックハウスからのオファーもあった。悩みに悩んだけれど、最終的に来季はアプリリアでMotoGPを戦うことにしました。Moto2でチャンピオンを獲れるなら今年かなと思っていたし、獲れないとしても今年以上に可能性があるシーズンが来るのかと……。ホンダ、アプリリア、Moto2と悩んだけれど、最終的にアプリリアを選びました」
悩みに悩んだ移籍のタイミング
トラックハウスから小椋にオファーが来たのは7月上旬、今季2勝目を挙げた第8戦オランダGPの後だった。その決勝レースで、小椋は今季初フロントローの2番手から好スタートを切ってトップグループに加わり、来季ドゥカティからMotoGPに参戦するフェルミン・アウデゲアをレース後半に抜いて優勝した。実はその時すでにホンダからMotoGP参戦のオファーを受けていたようだが、彼は僕のインタビューにこう答えていた。
「Moto2のタイトルがあれば、ほかはどうでもいいというのが正直な気持ち。だからチャンピオンを獲らないと先のことは考えられない……」
そんなときに舞い込んだ、ドゥカティの次に速いマシンと言われるアプリリアで参戦するトラックハウスからのオファーだった。
このチャンスを逃したら、もうMotoGPに乗れるチャンスはないのではないか……。いつもは誰にも相談しないという小椋が今回だけは答えを出せず、「さすがに人の意見を求めた」と振り返る。子どものころから二人三脚でレースを戦ってきた父・正治さん、そしてパドックで信頼を置いている人物に意見を求めた。その結果、トラックハウスに移籍してMotoGPに参戦することを決めた。