「プロ野球選手は、控え選手や二軍の選手でも、我々のレベルよりずっと上ですし、練習方法やメンテナンスの仕方なんかも全然違う。またプロ意識もすごいから、うちの選手のお手本になる」

　と語る。実はそれだけではない。

「最近は、会社の方から“プロ野球選手を獲れ”と言ってくる。プロまで行った選手は頭もいいし、一流の人と交流してきたから社交性もある。ビジネスマンとしても一流になる可能性があると言うんです。だから引退してからも、それなりの役職に就けて責任ある仕事を任せる。だから、選手としての能力だけでなく人柄も見て獲得しろ、と言われます」

　とのことだ。

“野球以外のスカウト行為”は禁止のようだが

　実は、コロナ前の「12球団トライアウト」では、球場周辺にスーツ姿のビジネスマン風の集団があちこちに見られた。彼らはトライアウトを終えて球場を後にする選手たちに「会社案内」を手渡していた。怪訝そうな表情を浮かべる選手もいたが、彼らは臆することなくアプローチしていた。主として生命保険会社や警備会社などの人事担当者だ。彼らは「野球」とは関係なく、ビジネス目線で選手を見ている。

　生命保険会社の担当者は「プロ野球選手は、先輩、後輩、同期、ファンなど縦横の人脈が凄いから、うちの会社に入社すれば、すごい即戦力になる。礼儀正しいし、好感度も高いから期待している。ライバル会社も多いから取り合いだ」と語った。

　警備会社関係者はこのように話す。

「背が高くて精悍な選手を取りたいよね。プロまで行った人は、オーラがあるし、現場のリーダーにすぐになれる。規律正しいし、すごくほしい人材」

　コロナ禍で2020年、2021年のトライアウトは無観客で行われた。だから野球以外の目的でやってくる企業のスカウト活動もできなかったが、今年はどうなのか。

2020年のトライアウト　©Nanae Suzuki

　球場周辺ではそういう人々は見かけなかった。スカウト行為は今年も禁止されているようだ。

人材コンサルタントが語る“セカンドキャリアの選択肢”

　しかし、一般客席にはスーツ姿の集団がいくつも見られた。

　休憩時間に、こうした取材を通じて知り合った人材コンサルタントに出会ったので、その辺りの事情を聴くと……。

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