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JリーグPRESSBACK NUMBER
“ファミリーを大事にする男”鈴木優磨(26歳)が小笠原満男にした“相談”とは?「この人がそう言ってるんだから、大丈夫なんだなあって」
text by
池田博一Hirokazu Ikeda
photograph byHirokazu Ikeda
posted2022/11/04 17:01
2年半ぶりの復帰となった今シーズン、鈴木優磨(26歳)はかつて小笠原満男がつけた「40番」を継承。タイトル獲得を逃したが「諦めない」と前を向く
2022年、夏。ある日の練習後、キャプテン土居聖真と座り込んで、ユース選手の居残り練習を見つめていた。
そのピッチはいつもユースの選手が練習で使用する、かつて鈴木自身も毎日ボールを蹴った場所だ。見つめる先には、アカデミーのテクニカルアドバイザーとして選手を鼓舞する小笠原満男の姿があった。
「今だから言うけれど、あのときはもう練習の雰囲気からチームが良くなくて、ものすごく危うい方向に行きかけていた時期だった。それは俺自身、聖真くんとよく話していて。そんなときに、ちょっと話をしようとユースグラウンドの方へ行ったら聖真くんもついてきて、(小笠原)満男さんにどうしたらいいかという相談をしたんだよね」
アントラーズのスクールからジュニア、ジュニアユース、ユースを経てトップ昇格した鈴木は、「アントラーズのすべてが刷り込まれている」と自身で語る通り、小学生の頃からカシマスタジアムに通い、トップチームの勝ち続ける姿を見てきた。スタジアム観戦は、決まってサポーターズシートの右上。ユースに上がるとボールボーイもつとめた。「勝って当たり前。だって、毎回勝つんだもん」。ベルギーに移籍してももちろん、いつもアントラーズの試合は欠かさず見続けてきた。「アントラーズは勝たないといけないクラブ」といつも口にするのは、当然ともにプレーした偉大なキャプテン・小笠原の影響もある。
「満男さんはいつもチームを客観的に見ている。選手に対して上から目線での言い方ではなくて、どっちかというとずっと背中で見せている感じだった。どんなにチームが悪い方向へ行っても、絶対に文句を言わなかった。それは一度も聞いたことがない。いつも『みんなでやっていこう』という言い方をしていた。今思えば、やっぱりすごいキャプテンだったよね。正直、満男さん以外のキャプテンは有り得なかった」
2015年にトップ昇格を果たしてから4シーズン、鈴木優磨は当時のキャプテン小笠原の背中を見ながらガムシャラに自身の結果を残すべくプレーした。
偉大なキャプテンが現役当時に見せた安心感は、今も変わらない。
「タイミングがあれば、満男さんのところへ話に行く。結構、いろいろ話しているんですよ」
「相談というよりは、確信を得るため」
アントラーズ復帰後は、副キャプテンを任された。クラブが打ち出すポスタービジュアルでは、前半戦、後半戦ともにメインを飾った。まさにチームの顔だ。だからこそ、小笠原にチームのまとめ方について相談しているのかと思えば、そうではないという。
――小笠原TAとはどんな会話を? チームのまとめ方の話が多い?
「いや、そんなことはないんだよね。そういう話をしないわけではもちろんないんだけど、いろいろ話を聞いてもらうという感じかな」
――気になることを相談できる相手がいるのは一つ、心に幅が持てますね。
「本当にそれはありがたい。でもね、実際はいろいろ相談をしても、満男さんって結局は『大丈夫だよ』っていう感じに落ち着く。なんかそれはそれでいいんだよね。もうこの人がそう言っているんだから、大丈夫なんだなあっていう気持ちになれる。俺はなんか、相談っていうよりかは、“確信を得るため”に話をしに行っている。大丈夫なんだな、っていう確信だよね」
――“確信を得るため”。一つの答え合わせですね。
「そうだね……。うん、そうかもしれない。満男さんは結構、客観的に考えているから。いろいろ聞いてもらって大丈夫って言ってもらうと、なんとかなるんだなって。たぶん満男さんからすれば、俺が話すことってすでに経験してきたことだと思うんですよ。だからたぶん、ちゃんと続けていれば、結果的にいい方向に行くんだよっていうのを言いたいんだと思うけどね」
――他に相談相手は?
「相談? 満男さんくらいかなあ。他にあまりいない」