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JリーグPRESSBACK NUMBER
“ファミリーを大事にする男”鈴木優磨(26歳)が小笠原満男にした“相談”とは?「この人がそう言ってるんだから、大丈夫なんだなあって」
text by
池田博一Hirokazu Ikeda
photograph byHirokazu Ikeda
posted2022/11/04 17:01
2年半ぶりの復帰となった今シーズン、鈴木優磨(26歳)はかつて小笠原満男がつけた「40番」を継承。タイトル獲得を逃したが「諦めない」と前を向く
いつも送り迎えの役目は「じいちゃん」だった。
「学校まで車で迎えに来てくれて、そのままダイレクトでアントラーズのクラブハウスに向かっていた。学校が終わったと同時に行かないと間に合わない。ランドセルを持って、そのまま。今思えば、間違いなくあの協力がなければ今の俺はないよね」
行き帰りの車中で、特に会話するわけではない。練習前だから「パワーを溜め込むために」助手席で熟睡。帰りは一緒にご飯を食べて帰る。小学生時代の半分を、そうやって過ごしてきた。
家族への感謝はプロになってから一つひとつ返していった。地元の銚子市からカシマスタジアムまで試合観戦に来るのに「大変だから」と、家族のために鹿嶋市内に一軒家を購入。自ら買った家で家族とふれあい、選手寮に住んでいた際も手料理を食べるために足しげく通った。2018年にはAFCチャンピオンズリーグで優勝し、MVPを受賞。真っ先にトロフィーを手渡したのが“じいちゃん”はじめ家族のみんなだった。
今シーズン、ベルギーのシントトロイデンからアントラーズへ復帰すると、再び家族と同居した。「洗濯機も回してくれるし、体のことを考えた料理を出してくれる。ケガをしないように野菜中心だったり、塩分控えめだったり、結構気を遣ってくれている。もう完全におんぶにだっこ」と表情をやわらげる。
今夏は家族に協力してもらい、どんなに暑い日でも熱々の鍋を食べ、内臓を冷やさないようにと努めた。オフの日は「ばあちゃんの唐揚げ」が大好物だ。普段の練習後にも、鹿嶋市内のレストランでお気に入りのカツカレーを頬張る。食事管理を気にはしつつもこだわり過ぎず、ときに楽しむ。それが鈴木の流儀だ。
試合後のコメントに変化?
ファミリーを大切にする姿勢は変わらない一方で、試合後のコメントに明らかな変化があった。かつては自分のプレーのことばかり語っていたが、チームを主語にした話が増えた。
得点を量産していた上田綺世が移籍で抜ければ「スペシャルな選手が抜けた今、泥臭い試合をして、全員で戦って勝っていく試合を目指すという話をみんなにした」と言い、タイトルを逃せば「俺は諦めない。いつ見ることになるのかわからない光に向かって、止まらず進んでいきたい」とチームの目線を前に向けて鼓舞する言葉を残す。
自ら発信するだけでなく、積極的に他者の意見にも耳を傾けるようになった。気になることがあれば、相談する相手は決まっている。