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《26年ぶり日本一》オリックスを支えた3人のリリーフ…”影のMVP”宇田川優希より、ある意味評価すべき39歳ベテラン「比嘉さん」の存在
text by
鷲田康Yasushi Washida
photograph byNanae Suzuki
posted2022/10/31 20:15
26年ぶりの日本一に輝いたオリックスを支えたリリーフ陣たち。山﨑颯一郎、宇田川優希、ワゲスパック…そしてもうひとり39歳ベテランの存在が大きかった
1人はもちろん宇田川優希投手である。
今年の日本シリーズ7戦を振り返ると、2つの大きなターニングポイントがあった。
1つは第5戦の勝負を決めた吉田のさよなら本塁打。この一撃でシリーズの流れはオリックスへと大きく傾くことになったが、その前にもう一つ、ヤクルトが完全に流れを掴むかもしれなかった場面で、その流れを引き戻した大事な局面があった。
それが第4戦でオリックス1点リードで迎えた5回の宇田川のピッチングだった。
先発の山岡泰輔投手がヤクルト1番の塩見に三塁打を浴びて1死三塁のピンチを招いた場面。外野フライも許されないこのシチュエーションで急遽、マウンドに上がったのが宇田川だったのである。
「走者が出てから(肩を)作り始めてすぐだったので、考える間もなくマウンドに上がった。本当に自分の投球だけ。それだけでした。焦らずに投げられたのが良かった」
本人がこう語ったように本当に緊急登板だったが、宇田川がここでポテンシャルを爆発させた。2番の山崎晃大朗外野手をフォークで空振り三振。続く山田哲人内野手も150㎞台のストレート2球で追い込むと、カウント1ー2から決め球のフォークをストライクゾーンに落とし、見逃し三振に切ってとってピンチを切り抜けた。
ここで追いつかれていたら、1分けを挟んで2連勝だったヤクルトに、再びシリーズの流れが傾くところだった。しかしこの宇田川の救援で、オリックスはピンチを乗り切り掴んだ流れを離さなかった。
「ピンチの場面でこそ自分の投球ができた」
宇田川はこの第4戦で回またぎの2回をピシャリと抑えると、第6戦でも6回に登板して2四球は許したが無失点でバトンをつなぎ、第7戦でも2回をピシャリ。早め早めに投手を繋いで逃げ切る中嶋采配のキープレーヤーとして、宇田川が機能したのだ。