比嘉がいなかったら…39歳ベテランの見事な火消し

　そして第5戦。同点に追いついた直後の5回無死一、二塁から村上の“併殺打”を一塁カバーに入った田嶋大樹投手がポロリと落として1死一、三塁と残ったピンチ。ここでマウンドに上がり、当たっているホセ・オスナ内野手をこの回2つ目の併殺打で仕留めて無失点でベンチに戻ってきたのも比嘉である。

「毎日準備しなければいけないけど、すごくやりがいがある。期待して使ってもらっているので応えたい」

　こう語る39歳のベテラン、サイドスローの火消し仕事は、優勝を決めた第7戦でも見事だった。

　8回、オスナの3ランを浴びて1点差に迫られた場面で、ブルペンからマウンドに走った。敵地・神宮球場のボルテージは最高に盛り上がって、ヤクルトを後押ししている。

　そんな場面でも冷静に6番の中村悠平捕手をフルカウントから外角寄りのスライダーで空振り三振。一発のあるドミンゴ・サンタナ外野手もフルカウントからファウルで粘られたが、最後は渾身の真っ直ぐで投ゴロに抑えて火を消した。

第7戦の8回、追い上げムードのヤクルトをピシャリと抑え最終回につないだオリックス比嘉　©Naoya Sanuki

　ヤクルトファンにとっては何とも憎たらしいこの背番号35の存在は、ゲームの中の1つ、1つの流れのやり取りで、その流れをオリックスへと引き寄せるものだったのだ。

　ある意味、宇田川やワゲスパックより、さらに地味な活躍だったかもしれない。それでもこの26年ぶりの日本一は、比嘉がいなかったら無かったものだった。そのことは確実に言えるだろう。

「いろんな選手が出たとは思うんですけど、全部、どの選手も戦力として、しっかり仕事をしてくれました」

　優勝会見で中嶋監督はこう選手たちに感謝の言葉を送った。

「むちゃくちゃなことをしてきたかもしれないですけど、選手が応えてくれました。考えた以上の力を発揮して勝ってきた。感謝しかないです」

　まさに全員野球が実現できた。だからオリックスは強かった。

©Nanae Suzuki

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