「ピンチの場面が結構あったが、ピンチの場面でこそ自分の投球ができた。そこは（登板した）4試合を通して良かったかなと思います。日本シリーズのマウンドは重圧もありますけど、0で抑えたら嬉しいし楽しいです」

　”影のMVP”の呼び声高い右腕はこうシリーズを振り返っている。

　2番目に挙げたいのが第4戦からクローザー起用されたワゲスパックである。

　中嶋監督の継投で唯一、誤算だったのが、ソフトバンクとのクライマックスシリーズ、ファイナルステージで守護神に抜擢し、日本シリーズでもその大役を任せるはずだった阿部翔太投手だったはずである。

　満を持して3点リードの9回に投入した第2戦、まさかの同点3ランを浴びて阿部のクローザー起用が難しくなってしまった。前日の第1戦ではシーズン前半に守護神を務めレギュラーシーズンでチーム最多の28セーブを挙げている平野佳寿投手も打たれてはいけない村上宗隆内野手に一発を浴びている。

”急造クローザー”ワゲスパックの完璧な仕事

　そこで急遽、指揮官がクローザーに指名したのが、シーズン5セーブのワゲスパックだったのである。

　クローザー初登板の第4戦ではいきなり丸山和郁外野手に二塁打を浴びたが、その後を3人で締めてセーブをマーク。続く第5戦、そして優勝を決めた第7戦と9回をピシャリと3人で締めて完璧な仕事を見せた。

　優勝決定試合ではゲームセットの瞬間、左手のグローブを高々と放り投げて、駆け寄った若月健矢捕手と抱き合った。まさにクローザーの醍醐味である。

オリックスのクローザーとして日本一のマウンドを託されたワゲスパック。優勝を決めた瞬間、グラブを投げ若月捕手の抱き合った　©︎Naoya Sanuki

   3人目に挙げたいのは「勝つ時には必ずこういう中継ぎ投手が必要だ」という縁の下の力持ち的な役割を演じた右腕、比嘉幹貴投手だ。

　とにかく困ったときの「比嘉さん」だった。

　第1戦で山本が左脇腹の異変を訴え、急遽、マウンドを降りたときも、交代したのは比嘉だった。第3戦の6回1死で宮城大弥投手が二塁打を打たれて降板すると、その後始末をしたのも比嘉だった。

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