今度はその遅いボールを思い切って使うことで、ストライクを取り、また真っ直ぐを有効に使う配球でオリックス打線を抑えにかかったのである。

2試合トータルでの配球の設計図

　1回、先頭の太田への2球目と3球目がチェンジアップだった。これは少し抜け切らずに球速が120㎞前後出てボールとファウルとなったが、3番の中川圭太外野手にはカウント1―1から101㎞で見逃しストライクをとり、最後はフォークで三振を奪った。2回は杉本の初球と紅林弘太郎内野手の3球目、3回には伏見寅威捕手の3球目と太田の2球目と早いカウントでストライクをとりにいく球種として、初戦とは一転してチャンジアップを使ったのである。

　小川と中村のバッテリーが2試合をトータルで考えた配球の設計図は、確かに狙い通りにオリックス打線を翻弄した。

　ただ、様相が少し変わり出したのが、打順が一回りした4回からだった。それまであまり手を出してこなかったチェンジアップを、オリックスの各打者が積極的に振るようになってきたのである。

初めて打たれたチェンジアップ

　4回先頭の中川が3球目のチェンジアップに手を出して中飛に倒れた。続く5回は先頭の安達了一内野手が初球のチェンジアップを見逃してストライクを取られたが、8番の伏見は3球目に手を出して中飛、続く山﨑福也投手も2球目のチェンジアップを打って中飛と、この遅い球を意識し、あるいは狙ってスイングするようになってきていた。

　そして迎えた6回。先頭の太田にカウント2―2から投じた5球目だった。100㎞のチェンジアップが高めに抜けた。失投だった。ただその失投を太田が見逃さなかったのは、打席で確かにこの遅球を意識していたからだった。

　この試合で小川が投じた12球目、2試合で17球目となるチェンジアップを初めて打たれた安打だった。

ヤクルト小川のチェンジアップを今シリーズ初めて安打したオリックス太田　©︎Nanae Suzuki

　この虎の子の走者を宗佑麿内野手が送り、2死から吉田の申告敬遠の直後に浴びたのが杉本の先制適時打だ。杉本に投じた4球は、すべて真っ直ぐだった。

【次ページ】　小川「出せるものは出し切りました」