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J1昇格に得点王、それでも小川航基25歳の自己評価は「まだまだ」…くすぶり続けた東京五輪世代の大器が横浜FCで迎えた覚醒のとき
text by
戸塚啓Kei Totsuka
photograph byYUTAKA/AFLO SPORT
posted2022/10/18 11:02
今季ここまで40試合に出場して24ゴールをあげた小川航基は、2位以下に大差をつけてJ2得点ランキングを独走。横浜FCのJ1昇格の原動力となった
かつて跳ね返された「J1の壁」を超えられるか
金沢戦は今シーズンのホーム最終戦だった。試合後にはピッチ上でインタビューが行なわれ、小川もマイクの前に立った。スタンドからの拍手に、二度三度と頭を下げた。
「ホントにこのチームは素晴らしくて。熱いサポーターと、熱い仲間と、熱いスタッフと監督と、フロントスタッフと、このチームで昇格したいとキャンプのときに強く思ったので、今日の試合には負けましたけど、いまは目標が達成できて素直に嬉しい気持ちでいっぱいです」
セレモニーを終えて着替えを済ませると、改めてJ1昇格の思いを語った。表情には安ど感がにじんでいる。
「やっぱりホッとしていますし、(岡山が負けて)試合前に昇格を知ったときよりも、セレモニーが終わって実感がようやく湧いてきたところです。試合には負けましたけど、素直に嬉しいです」
今シーズンのゴール数について聞かれても、表情を崩すことはない。自己評価は意外なほど厳しい。
「得点は取れましたけど、まだまだダメなところとか改善しなきゃいけないところがホントにたくさんある。僕だけで取ったわけではなく、あとは決めるだけというパスをくれたチームメイトのおかげだと思っています。まだまだ自分は力不足なところがありますけど、得点を取れたという事実は自信になります」
得点だけでなく、出場試合数もプレータイムも自己最多だ。シーズン40試合出場は、現時点でキャリアハイでもある。今度は少し、表情がやわらいだ。
「ここまで長く試合に出たことはなかったので、ゲームの流れとか、こういうときはこういうプレーが効果的といったことを、経験として積むことができました」
新シーズンは19年以来4年ぶりのJ1に挑む。これまで23試合に出場しているが、ゴールは18年にあげた1点だけである。それもPKだ。チームの未来についての質問への答えは、他でもない自分自身を叱咤するものだったのかもしれない。
「まだまだ見ている人や関係者の方には、J1で戦えるのかと疑問を持っている人はいるでしょうし、それを払拭できるぐらいの力をつけていかないと、J1では戦えないと思う。そんなに甘い世界じゃないですし、J1昇格は忘れて次のステップへ向かいたいと思います」
22年のJ2リーグは、小川航基にとって新章のスタートとなった。得点王という確かな実績を残し、将来を嘱望された大型ストライカーはキャリアアップをはかっていく。