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プロ野球PRESSBACK NUMBER
消えたオマリーのパンツを探せ! 大杉勝男、古田敦也、バレンティン……“伝説の用具担当”が語る歴代スワローズ選手たちの愉快なこだわり秘話
text by
佐藤春佳Haruka Sato
photograph bySANKEI SHIMBUN
posted2022/10/11 11:02
1995年リーグ優勝を果たしたヤクルト・野村監督(左)はビールかけでオマリー(右)の〝攻撃〟を受ける
「大杉さんが怖かったのでつい“分かりました”と返してしまったけれどそれは絶対に無理。頭を抱えていると、ふと目の前に大きなドラム缶があったんです。待てよ、あそこにいい物があるじゃないか、と」
力の限りユニフォームを引っぱってドラム缶にかぶせて一昼夜……。
「もうやけくそでしたが、翌日素知らぬ顔で渡したら、それを着た大杉さんは“おう、これはいいな”と。あのドラム缶にかぶせて伸ばしたことは、最後まで明かせませんでしたね」
“勝負パンツ”を失くしたオマリーの悲痛な叫び
こだわり、と言えば野村監督時代に活躍したオマリーも忘れられない選手の一人だ。阪神、ヤクルトで通算123本塁打を放ったスラッガーだが、試合に出場するにあたり絶対に譲れない“繊細すぎる”ゲン担ぎがあった。
「ユニフォームの下に着るアンダーシャツとスライディングパンツで、“これがないと絶対にダメ”というこだわりのものがあったんです。ただ、それ1つしかなくて毎日洗って何年も使い続けているので、本当にくたびれてボロボロなんです」
いわゆる“勝負下着”だ。地方球場で行われたある日の試合前のこと。顔面蒼白のオマリーが寺井さんのもとに走り寄ってきた。「あれがないんだ!」。普段クリーニングをしている神宮球場の業者はゲン担ぎを知っているが、地方球場で洗濯を請け負っているのは地元の業者だ。ボロボロの“勝負下着”を処分されてしまった可能性もある。
「練習中、試合前と何度も何度も“見つかったか?”と聞きに来るんですよ。他の選手にも“オマリーさんのスラパンを見つけてください!”と呼びかけたんですが出てこない。可哀想になるくらいションボリしていて、“あれがないと試合に出られない”と、泣きそうになっていました」
泣く泣くあきらめたオマリーだが、試合中に他の選手の洗濯物に紛れ込んでいたことが判明し一件落着。戻ってきた“勝負下着”を渡されると、飛び上がらんばかりに喜んだという。