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今年で60歳・川平慈英サッカー愛を語りまくる怒涛の90分「クーッ!脳内モルヒネが出まくってた」プロを目指したイケイケFW時代
text by
飯尾篤史Atsushi Iio
photograph byKiichi Matsumoto
posted2022/09/23 11:05
9月23日に60歳の誕生日を迎えた俳優・川平慈英。愛してやまないサッカーとの出会いを語った
3年間のアメリカ生活に終止符を打ち、失意のまま帰国した川平は上智大学の編入試験に受かったものの、生きる目標を失い、抜けがらのような日々を過ごした。
「バイト、居酒屋、家のトライアングルで、やさぐれていました」
そんなある日、東京学生英語劇連盟のキャスト・スタッフ募集の告知を目にする。
演目は、ニューヨークの音楽専門学校を舞台にした青春群像劇の『フェーム』だった。
「もともと映画版が大好きで、感動のあまり8回くらい観に行ったんです。リロイという黒人ダンサーに惚れ込んでいて。これは運命的だな、行くしかないなと」
実は川平には、中高時代に英語劇部や演劇表現部に所属した経験があった。
そして読売ユースの練習、へストン大学サッカー部の練習に続き、みたびノンアポで、手ぶらのままオーディション会場を訪れた。
「またしても『walk-in』です。ノリと勢いだけで歌って、審査員のテーブルに飛び乗って。さすがにそれは怒られたけれど(笑)、2週間後、オーディション通過の通知が届いた」
さらに合宿最終日のキャスト発表で、「ジェイ、リロイ!」と言い渡されるのだ。
「まるでサッカーで会心のゴールを決めたような気持ちの良さだった。しかも3日間の公演は立ち見が出るくらい大盛況で、最後はスタンディングオベーション。俺の生きる場所はピッチじゃない。ステージなんだ、これしかないって」
こうして川平は演劇の世界でのし上がっていくことを誓う。
だが、それが結果的にサッカーの仕事を呼び込むことになるのだから、人生は分からない。
大学在学中の86年、スーパーロックミュージカル『MONKEY』でミュージカル俳優としてデビューを飾ってから7年後の93年5月、川平は『ニュースステーション』のサッカーキャスターに大抜擢される。
「でもね、『ニュースステーション』の話が来たとき、僕は最初、断ったんですよ」
(つづく)
[撮影協力]Stylist/Emiko Seki Hair&Make/Hidenobu Morikawa(NOV hari&make)
[衣装]ジャケット/DESCENTE PAUSE シャツ/DESCENTE ddd(ともにDESCENTE BLANC DAIKANYAMA)
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