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マスクの窓から野球を見ればBACK NUMBER
「山田陽翔(近江)や浅野翔吾(高松商)だけじゃない」現地記者が明かす、甲子園“誰も書かなかった”隠れた逸材3人《投手・捕手編》
posted2022/08/31 06:01
text by
安倍昌彦Masahiko Abe
photograph by
KYODO
夏の甲子園で宮城代表の仙台育英が優勝し、深紅の大優勝旗がついに白河の関を越えた。
毎年そうなのだが、始まる前は17日間の取材長いなぁ……とため息が出るが、いったん始まってしまうと、これが早い、早い……もう終わりかと、やはりため息が漏れてしまうのが、「夏の甲子園」だ。
準々決勝、大会屈指の剛腕・山田陽翔投手(近江)からバックスクリーンに弾丸ライナーの同点ホームランを放った浅野翔吾中堅手(高松商)。
初球146キロでふところを突かれ、2球目は足元に必殺ツーシーム。ベストボールで内側を攻められても、3球目の真ん中速球をジャストミート。ライナー打球なのに、センターが2、3歩でもう諦めていた。
打てないボールは見向きもせず、失投を待ち構えてひと振りで放り込む……プロ仕様の、したたかなバッティングができるのが、浅野翔吾という「バットマン」の才能だ。
その山田や浅野をはじめとして、今夏も何人ものヒーローがメディアの報道に登場したが、これほどのスキルを持っていながら、これほどの将来性の片鱗を発揮しながら、どうして取り上げられないのか……そんな「誰も書かなかった、誰も触れなかった逸材たち」が何人もいる。
「投手・捕手編」、「野手編」に分けて、隠れた実力者たちをお伝えしたい。この前編は投手・捕手編の3人だ(全2回/野手編へ)。
【1】興南高・生盛亜勇太投手「潜在能力のかたまり」
立ち上がり、バックのエラーもからんだ1死二、三塁のピンチを、どん詰まりの二塁ゴロと空振りの三振で切り抜けてベンチに戻る姿を見て、センバツで優勝した頃の東浜巨(沖縄尚学高、現・ソフトバンク)の姿を思い出していた。
展開によってはビッグイニングもありうるピンチだったのに、何ごともなかったように飄々とベンチに戻ってきた。
沖縄代表の興南高・生盛亜勇太投手(せいもり あゆた・3年・177cm74kg・右投左打)。これはいいぞ、と思った。正確にいえば、この先、「いい投手」から「すごい投手」に変身しそうな……場合によっては、「とんでもない投手」になりそうな可能性が、ビンビン伝わってくる。
全身のバネの弾力で、真っ向から投げ下ろすスタイル。たいして力感はないのに、コンスタントに145キロの出力なら、細身でも投げるパワーは十分だ。