桑田・清原のPLを倒して茨城勢初優勝から41年甲子園なし…“世紀の番狂わせ”の公立校・取手二高は「今、2年生の野球部員は2人だけ」

　1984年。この年の取手二高（茨城）は、間違いなく強かった。前年秋の茨城大会を制し、関東大会で初優勝。2年連続で出場した選抜では、優勝した岩倉（東東京）に3対4と善戦して過去最高の8強進出、夏に初の全国制覇を成し遂げた。

PLを破った「世紀の大番狂わせ」

　ただ、この優勝が「世紀の大番狂わせ」と言われる所以は、決勝で対戦した相手が、あの「KKコンビ」を擁して大会連覇を狙ったPL学園（大阪）だったからだ。怪物2年生の桑田真澄（巨人、パイレーツ）、清原和博（西武、巨人など）に夏唯一の黒星をつけた公立校の「のびのび野球」は、高校野球ファンに衝撃を与えた。

1984年夏優勝メンバーの取手二・下田和彦監督（右）と山崎昌弘コーチ　©Katsuharu Uchida

　その桑田が、再び決勝で取手二に敗れた秋の国体後に、取手を訪れたのは有名な話だ。16歳は公立校に2度も負けた原因を追い求めるべく、大阪から単身で茨城に乗り込んだのだ。

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　1学年下の桑田、清原と高校日本代表の同僚で、2021年夏から母校の取手二で指揮を執る下田和彦が当時を懐古する。

「桑田は本当にいい子で、当時から野球オンリーでした。取手二のグラウンドにも来て『こんなところでやっているんだ』って驚いていました。その後、みんなでボーリングをやりました。右手で普通に投げていて、コントロールがやっぱりよかったです。ずっと一緒にいた記憶がありますね」

桑田を驚かせたグラウンドは今も

甲子園で敗れた桑田。その後、2度の敗因を知りたいと取手二高を訪れた　©JIJI PRESS

　桑田が取手二を見て驚くのも無理はない。PLと違い、豪華な専用球場も室内練習場もない。利根川の雄大な流れを望む小高い住宅街にあるグラウンドの片隅には、ウエイト器具代わりに電車の車輪が4輪、無造作に置かれているのみ。当時、どこにでもある公立校の風景と大差なかった。

　優勝メンバーの一人で、現在はコーチとして同期の下田を支える山崎昌弘は「グラウンドは当時とほぼ一緒です」と証言する。

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