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佐々木朗希と比べると地味!? 球宴ファン投票1位の“非エリート”阪神・青柳晃洋(28)の出世街道がスゴい「野球が下手くそでサイドスロー転向」
text by
豊島和男Kazuo Toyoshima
photograph bySankei Shimbun
posted2022/07/26 11:05
抜群の安定感を誇るピッチングで、セ・リーグ先発投手部門のファン投票で1位に選出された阪神・青柳晃洋(28歳)。オールスター第1戦の先発を託された
さらに、ここ数年の「対左打者への苦手意識」も払拭しつつある。
《年度別・対左打者の被打率》
2016年=.224(右打者=.127)
2017年=.295(右打者=.124)
2018年=.217(右打者=.333)
2019年=.332(右打者=.193)
2020年=.288(右打者=.193)
2021年=.241(右打者=.243)
2022年=.233(右打者=.143)
また、青柳の存在感を高める理由として、各球団の主力右打者を翻弄する点がある。実は、自身が入団会見ではこう言葉にして抱負を語っていた。
「どんどん(右打者の)内角を攻めていきたい。対右バッターには自信を持っている。阪神は巨人にライバル心がある。坂本(勇人)さん、長野(久義)さんといった素晴らしい右バッターと対戦したい」(入団会見より)
《主力右打者への通算被打率》
ヤクルト・山田哲人=1.22
巨人・坂本勇人=.194
広島・菊池涼介=.000
広島・長野久義=.000 ※巨人時代を含む
中日・ビシエド=.197
DeNA・宮崎敏郎=.178
入団時から間近で見守ってきた矢野監督が評価するように、青柳の貪欲さと強い向上心には感服させられる。だが、それだけで通用するほどプロは甘い世界ではない。そこにはやはり「下手くそだから」という思いが原点がある。客観的に自らの立場を理解する力とポジティブな思考力が、日本を代表するサイドスロー投手への成長を後押ししたのだ。
稲葉監督を祝う「ハッピーバースデー」
そして、明るい性格も変わらない。昨夏の東京五輪では不慣れな中継ぎとして登板した2試合でとも失点を喫した。計1回2/3を投げて、防御率は27.00。
しかし、日の丸の重圧に押しつぶされそうになりながらも「打たれたことも経験」と常に前を向いた。救援に失敗した数日後には、選手が音頭を取って侍ジャパン稲葉篤紀監督のサプライズ誕生日会が開かれたが、青柳はその場ではマイクを握り、「ハッピーバースデー♪」と生歌を披露し、チームを和ませた。
「歌ってくれた。グッと来た。チームのために何とかしたい。その気持ちが嬉しかった」
金メダル獲得後の会見で、稲葉監督は名指しで“活躍”を称えている。
名実ともに一流の仲間入りを果たした。こんな未来を、誰が想像していただろうか。もしかしたら、青柳晃洋だけはこの飛躍を想像できていたのかもしれない。
そのサクセスストリーにはまだまだ続きがある。将来、メジャーリーグの舞台で大谷翔平と投げ合っている可能性だってある。夏の球宴を前に、非エリートの夢はさらに大きく広がっている。
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