バレーボールPRESSBACK NUMBER
“ポスト木村沙織”と呼ばれた古賀紗理那へ「本当に頼もしい。でも、驚きはないかな」キャプテンの重圧を知る元エースが期待する理由とは?
text by
田中夕子Yuko Tanaka
photograph byShigeki Yamamoto
posted2022/07/25 11:00
銅メダルを獲得したロンドン五輪から10年、かつて自身も経験した“代表キャプテン”として奮闘する古賀紗理那へエールを送った木村沙織
4年後のリオデジャネイロ五輪では、ロンドンを上回る成績を――そんな期待に応えるべく、木村は世界最高峰リーグのトルコへ渡り、チャンピオンズリーグも制覇した。
とはいえ所属したワクフバンクSKには世界のスーパースターが集い、自己主張が激しくぶつかり合うチームメイトの中で、レギュラーとして活躍できたわけではない。ならば次のシーズンはもっと試合に出たい、活躍したい、自分の名を広めたい、と海外市場で自分を売り込むプロ選手が当たり前とされるが、木村はその真逆だった。
海外でさらなるステップアップを求める気持ちはサラサラなく、むしろ「すべてやりきった」とばかりに、13年限りでの引退も考えていたという。
だが、事態は一転し、本人曰く「まさかの」日本代表主将に就任する。
引退決意から主将就任へ。粘り強い交渉の末に木村の心を引き留めたのは、ロンドン五輪に続いてリオ五輪で女子バレー日本代表を率いることとなった眞鍋政義だった。当時を振り返り、眞鍋は「(木村に主将就任を受けさせるのは)本当に大変だった」と事あるごとに言うが、同様に、木村も笑う。
「(荒木)絵里香さんとよく話すんですよ。『眞鍋さん、私と沙織をキャプテンに選ぶなんて間違えているよね』って。実際にやってみて、私も心からそう思います(笑)」
今でこそ笑い話だが、日本代表のキャプテンとして過ごした4年間、責任の重さは何度も痛感した。だからこそ、同じようにその重責を背負うことに決めた選手を、優しく慮る。
現キャプテン・古賀紗理那への想い
「(古賀)紗理那は(代表に)行くかどうか、すごく迷っていたと聞いていたし、その気持ちはわかります。でも私も含めて周りはごく自然に、キャプテンは紗理那だとも思いますよね。実際今、テレビで試合を見ていても、すごく頑張っているし、これぞキャプテンという感じで紗理那が前に出て、チームを引っ張っているし発言も心強い。尊敬のまなざしで見ています」
古賀が初めて日本代表に選出された13年、主将でエースだったのが木村だ。同じアウトサイドヒッターというだけでなく、180cmを超え、攻撃だけでなく守備もこなすプレースタイルも重なり、新戦力の古賀を報じる際にはいつも「木村沙織の後継者」や「ポスト木村沙織」の枕詞がついた。その都度「恐れ多い」と古賀は謙遜し、木村は「紗理那は紗理那。(自分と)同じにされるのは申し訳ない」と気遣った。そして木村は常々、「自分よりもずっとすごい選手になる」と期待を寄せてきた。
共にコートに立つことを目指した16年のリオデジャネイロ五輪では、直前の最終選考で古賀が落選した。「(五輪出場の)12名には入らない」と眞鍋から告げられた夜、木村は泣きながら「紗理那は埋もれちゃダメだよ」と労り、その言葉を受けた古賀は号泣した。