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あのロンドン五輪から10年、木村沙織はいま何してる? カフェでカヌレとスコーンを焼いている人、近所の公園で小学生姉妹と「パス50回やろうよ」
posted2022/07/25 11:02
text by
田中夕子Yuko Tanaka
photograph by
Shigeki Yamamoto
高校時代から日本代表選手として活躍し、現役引退の2017年まで4度の五輪にも出場。
“バレーボール選手の木村沙織”だった頃は、朝も昼も、それこそ正月もクリスマスもなく、ひたすら練習に明け暮れた。
現役引退から5年――。
結婚、引退を経て、肩の力が抜けた今は大阪で夫と共にカフェを営み、ただただ穏やかで「地味な」日々を過ごしている。
「朝からカヌレとスコーンを焼き始めて、13時頃にお店へ納品する。ランチ時で混んでいたらお店を手伝いますけど、間に合いそうだったら足りないものを買い出しに行ったり、銀行へ入金に行ったり。家に帰ってからは次の日の仕込みもします。地味な生活ですよ。“木村沙織のカフェ”と言って下さる人もいますが、むしろ私は飾り付けみたいなもの。焼いたお菓子を入れるだけで、お店は旦那さんがメインで回しているんです」
お菓子づくり「最初はものすごく失敗した(笑)」
現役時代からバレーボールとは交わらない「やってみたいこと」はいくつもあった。その1つがカフェ。19年に大阪でオープンした際は、カフェというよりカフェバーの趣が強く、夜にお酒を出して簡単な食事も出す程度だったが、新型コロナウイルスが蔓延し、緊急事態宣言が出されて営業停止も余儀なくされた。
それならば、と思い切って夜から昼へシフトチェンジを果たすべく、近所のコーヒー店に先生役を依頼して夫がコーヒーの勉強をスタート。その間、木村は「コーヒーが出せるようになるなら焼き菓子をつくりたい」と、中学・高校の同級生で、かつて東レでも共にプレーし、現在はアイシングクッキーなど製菓の講師も務める森山美耶さんに習い、お菓子づくりを始めた。
だが、バレーボールのように最初からうまくいくわけではない。きちんと材料の分量を量り、手順に沿ってつくるお菓子づくりに「最初はものすごく失敗した」と笑う。
「形もうまくいかない、焼き方もイマイチ。オーブンの温度とか、粉の配合、いろんな失敗を繰り返しました。せっかくつくるなら自分の好きな味、好きな感じにしたかったので、教えてもらったことだけでなく、いろいろな本を見たり、YouTubeでいろいろな情報を集めて。どうやったら自分が一番つくりやすくて、一番好きな味になるかを何回も何回も繰り返して、今に至った。製菓学校を出たわけでも、お菓子づくりのプロを目指してやってきたわけでもないので、こうやってバレー以外のことを聞かれて話すのは恥ずかしいですね(笑)」
とはいえ、凝り性ぶりは変わらず、意外なところにバレーボールとお菓子づくりの共通点も感じている。