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巨人・坂本勇人34歳に忍びよる影「あと何日間かください」原監督の”打診”ともう一つの選択肢「勇人を中心にしたチームだよ」
text by
鷲田康Yasushi Washida
photograph byKiichi Matsumoto
posted2022/07/09 11:01
7月7日に今季3度目の離脱をした巨人・坂本勇人
原監督から一塁での復帰を打診されて
そのことを坂本自身が顕に語ったのが、7月3日に放送された日本テレビ系「Going! Sports&News」内でのインタビューだった。
そこで坂本は右膝内側側副靭帯損傷から復帰の際に、原辰徳監督から守備の負担の少ない一塁での復帰を打診されたことを明らかにした。
ただ、坂本本人は「ショートで戻ることを意識してリハビリもしていた。(ファーストでの復帰の話は)あえてスキップして、あと何日間かくださいというやりとりはありました」と、あくまで遊撃手としてチームに戻ることを選択したと語っていた。
そしてその坂本の思いに、原監督もそれ以上は踏み込まなかったということだ。あくまでショートで勝負をしたい、と思うのはショートで生きてきた名手の誰もが持つ意地だということを分かっているからだった。
ただ、事態は約1カ月でそこからさらに深刻になった。
3度目の離脱で別の選択肢も
坂本の3度目の離脱で、本人が望むと望まざるとにかかわらず、誰かがいよいよ鈴をつけなければならない状況が迫っているということだ。そしてもし2度目の“打診”があれば、今度は本人もそれを「スキップ」できる状況ではなくなっている。
それが坂本のコンバートを巡る現実である。
そしてもしコンバートを断行するとすれば、坂本の行き先として、前回打診された一塁だけではなく、もう1つ、別の選択肢も視野に入ってくることになるだろう。
前回、原監督が坂本に一塁での出場を打診したのは、ある意味、緊急避難的な意味合いでのコンバート案だった。ただ、このわずか1カ月での再離脱という現実に、そうした場当たり的なものではなく、チームを見回した上で、じっくり将来を見据えた行き場を考えなければならなくもなっている。そういう長期的な視点で坂本の負担軽減を考えれば、コンバート先は三塁となる可能性もあるということだ。
坂本が登録抹消された7日の試合前練習で、岡本和真内野手が一塁の練習を始めた。
実は一塁はチームプレーでの動きが多く、言われている以上に難しいポジションなのである。
以前に「打撃に専念させる」という目的で外野から一塁にコンバートされた高橋由伸さんが「一塁はやることが一杯あって難しい」と語っていたことがあった。打球処理だけではなくカットマンやバント処理などシチュエーションによってカバーしなければならない動きが様々ある。
「自分も一塁をやってみて分かったけど、人の投げたボールを捕るのは難しい。シュートもするしスライドもする。低いボールはいいけど左右や上に外れた送球を補球する際には思わぬ動きをしなければならないですからね。ポジション的な難しさもそうですが、内野手で肉体的な負担という点でも一番少ないのはサードですね」
こう語っていたのは、巨人で内野守備コーチも務めた井端弘和さんだった。